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背中でも語る犬「穴澤賢の犬のはなし」

背中でも語る犬

『前回書いた話』には、実は続きがある。お裾分けをもらおうと、大吉がものすごい圧をかけてくるときは本当に目で語りかけてくるように感じる。毎回その圧力に屈してしまう、ということは書いた。
問題はその後で、お裾分けをもらって満足したら、今度は別の要求をしてくる。3階へ続く階段の扉の前にちょこんと座り、「開けて」とアピールしてくるのだ。大吉はだいたい21時には寝室へ行って、ゆっくり寝たいようだ。
それは人がまだリビングで食事をしているとか、そんな事情は一切関係なく、ただ単に時間になったら寝室へ行きたいという大吉自身の「理想のライフサイクル」によるものらしい。冬は階段の扉を開けっ放しにしていると、上から冷気がおりてきて暖房効率が悪いので閉めている。その扉を開けてくれ、というわけだ。
納得いかないのは、仕事が遅くなったりして晩酌をはじめるのが21時を過ぎてしまうときだ。本来なら寝室へ行きたいはずの大吉だが、豚しゃぶだとわかると、お裾分けをもらうまで寝室へ行きたそうなそぶりを見せないのだ。
そして前回書いたように、こちらが根負けして豚肉を一切れあげた途端「はい、じゃ、扉開けて」と露骨に態度を変える。ついさっきまでの、「くれないの?」という目はなんなんだ、と思う変貌ぶりである。
階段の方を向いて座り、ちらちらとこちらを振り向く。お裾分けをもらうときの「お願い系」の圧とは違う、「早く開けてくんないかなぁもう」という「指図系」の圧をかけてくる。
落ち着いて飲んでられないので、根負けして扉を少し開けてやると、文字通り、待ってましたとばかりに大吉はとっとと寝室へ消える。さっきまであれほど振り返っていたのに、一度も振り返ることなく。「豚肉、ありがとね」みたいな態度も一切なく。
福助も「オレも寝るー!」とばかりにその後に続いて階段を登って行く。都内に勤める嫁はだいたい帰りが遅いので、その後は静まりかえったリビングで、ひとり焼酎(芋)ロックを飲むことになる。
いつだったか、この連載で「犬はひたすら飼い主のそばにいたいだけ」と書いたことがあるが、訂正する。わが家の犬たちは、自分満足したら、とっとと寝る。
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