先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
少し前、移住したらのんびり暮らせるんじゃないかと思ったが、『
そんな日々は未だに訪れてない 』と書いた。今回はその具体例を紹介しようかと思う。
環境整備が重労働
薪割り、薪運び、雑草との闘い、ドッグランの整備、外壁の塗装などと書いたが、私が1番しんどいと感じているのは玉切りである。玉切りとは、原木を薪ストーブに入る40センチにチェーンソーでぶった切ることだ。
やる理由は、単純にコストの問題だ。割った薪を買えばいいのだが、軽トラいっぱいに積んで25000円くらいする。それが1カ月もたない。月に2回買うと、50000円かかる。それが薪ストーブを使う10月から4月頃まで続くことになる。
そんなにかかるなら石油ストーブでいいじゃないと思うかもしれないが、寒冷地仕様のFF式ストーブでも普通に使って灯油代が1カ月50000円くらいかかる。しかも家の暖まり方は薪ストーブの方が圧倒的に優れている。
夏はエアコンがいらないくらい涼しい(実際にエアコンがついていない)と聞けば電気代も安く済んでいいなと思うかもしれないが、その分、冬が寒いのだ。だから光熱費はいってこいで、1年を通せば都会とそんなに変わらないはず。
先が長い薪割り作業
割った薪だとそれくらいかかるが、原木を買って自分で切って割れば、おおよそ1/3で済む。林業の人から「ナラ出たけど、いる?」と電話があってお願いすると、家の前にトラックが来てゴロゴロと下ろしてくれる。
以前の私なら「どうすんだよこれ状態」だが、幸い定住している大工さんからチェーンソーの使い方や、薪割り機の使い方を教わったので、今ではなんとできるようになった。ただ、これを前にすると気が重い。
慣れていないこともあるが、チェーンソーで特に太い木を切るのは楽ではない。しかも切りやすいよう転がして並べたりしなくてはいけない。切れにくくなると、チェーンソーの刃を磨いだり、交換しなくてはいけない。玉切りしたら、運んで積んでいかないといけないが、40センチに切っても、太い木はめちゃくちゃ重たい。
そもそも、作業に危険が伴う。だからチャップス(ズボンの上から着用する脚用の保護具)を履いて、革手袋をして、顔をガードするマスクをして行う。木を転がすときに、絶対に転がる方にはいないようにする。これまで危険な場面はないが、気を抜くと大けがにつながるので、いつも細心の注意をはらっている。休憩や水分補給も怠らない。
結局、5時間やって半分しかできなかった。今度、あと半分片付けることにしよう。恐ろしいことに、玉切りして終わりではない。今度は上まで運搬機で運んで、薪割り機で割らないといけない。それを薪棚に積んで、作業完了である。まだまだ先は長い。
ここまで読んで「山暮らしって、そんなに大変なの?」と思うかもしれないが、そんなことはない。なぜなら、玉切りしたものを薪割りしている人はちょくちょく見かけるが、原木が積まれている家なんてほとんど見ないからだ。
私の場合、大工さんから「それくらい自分でできるようになった方がいいよ」と言われ「そうなのか」と思ったからやるようになっただけで、今になって、こんな重労働をするくらいなら、割った薪を買えばよかったのではないかと思っている。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」 というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
『犬のために山へ移住する』(草思社刊)