犬が好き
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心を閉ざした野犬を家族に迎えて、2年が経過 困難をひとつずつ乗り越えた先に見えた、確かな変化とは

いぬのきもちWEB MAGAZINEでは、杢くんとの出会いや今の暮らしなどについて、飼い主さんに2回に分けて(2021年6月/2022年7月に取材)お話を伺いました。
怯えた表情をしている杢くんの写真を見て、会いに行くことを決意

そんな時期に、保護犬サイトでなんともいえない怯えた表情をしている1頭の子犬の写真を目にします。そのコが杢くんでした。

「杢はその後、保護団体の東京支部に移送されていて。偶然にも、杢が保護されている場所が近所だったので、『初めてで保護犬のことが何もわからないからこそ、一度杢に会いに行ってみよう』と施設に行ったのが始まりでした」
杢くんを家族に迎えるまでのこと


「いきなり迎え入れるのは可哀想だと思い、トライアルに入る前の2週間、毎日保護施設に通い、ごはんを手からあげて、杢に信用してもらえるように努力を重ねました。
最初は近づくだけで逃げられてしまいましたが、少しずつ慣れてきて、手から食べてくれるようになったときのことが、今でも印象に残っています」
トライアル期間→家族になってからも、さまざまな難関が

「当時、杢はまだ生後5カ月ほどだったので、『愛情たっぷりに接していたらすぐ慣れるはず!』と何の根拠もない自信がありましたが、そう簡単にはいきませんでした。杢は極度に人への警戒心が強く、もはや野生の動物と暮らしているような感覚で…今まで私が抱いていた犬の概念は覆されました」

「真夜中の人がいない時間に散歩したり、保護施設で出会った仲間と一緒にお散歩の練習もしました。恐怖心が強い杢ではありますが、杢自身が『犬が好き』という唯一の頼みの綱を最大限に生かす方法を考えました」
杢くんの成長を感じる出来事が

「『お散歩=大好きな犬に会える!』という気持ちが、杢に芽生えたようで。これがきっかけで、毎日車で15分かけてその公園に通い続け、お散歩前にはブルブルと震えていた杢が、家の階段前で『早く散歩行こうよ!』と催促するようになったんです。
杢のあの姿を見たときには、本当に涙が出るほど嬉しかったです。迎えた頃の杢からは想像すらできない、びっくりするほどの成長でしたね」
家族が増えて、杢くんの新たな一面も
「杢は寡黙で余計なことは一切口にせず、 飼い主であっても一定の距離を置いています。人には媚びず、悟りを開いているかのような偉大さもあります」

「2021年6月15日に、私たちは元保護犬・土筆(つくし)を新たに家族に迎えました。杢は散歩のときに後ろを振り返り、土筆がついてきているかを確認したり、見えなかったら立ち止まったり。土筆が声を出すと、杢が心配そうに駆け寄ることもありました。
お散歩が怖かった杢だからこそ、 土筆のお散歩が心配で仕方がないのかもしれません。土筆に『ウー』と言われたり、オモチャやベッドを取られてもそんなことは関係なく、優しさで土筆を包み込む杢の姿を見ると、本当に愛おしい気持ちでいっぱいになります」
これからも、愛犬たちの成長をそばで見守りたい
2頭がどのように心を開いてくれるのか——飼い主さんは、「これからもずっとそばで見守っていきたい」といいます。
「杢のしっぽが少し上がっただけでも嬉しかったように、特別なことは求めません。これからも少しずつできることが増えていく日々の成長を楽しみたいと思います」
【その後に迫る】取材から1年が経過、現在の2頭の様子は?

「愛嬌抜群で喜怒哀楽を全力で表現する土筆に影響されたのか、杢は少しずつ感情を表に出してくれるようになりました。この1年で、私たちとの距離もグッと近づいています。
嫌なことは全力で拒否していた土筆ですが、苦手だった爪切りなどのお手入れがだいぶ上手にできるようになりました。自己主張が強いところがありましたが、家族のことを心配して気にかけるような優しさを見せてくれるようになりましたね」
「土筆のような愛嬌のある一面が杢の中に、杢のような穏やかで優しさを感じる一面が土筆の中に、それぞれに生まれたように感じます」
2頭の関係性は?
「正反対な性格の2頭でしたが、見ているこちらが照れるくらい仲良く過ごしています。
人通りの多い場所などは土筆が杢をサポートし、土筆が怯えていたら杢がすっと間に入るなど、お互いに苦手な面を補っているかのように感じることもあります」
杢くんと土筆ちゃんへの思いとは
「2頭とも、まだ完全に心を開いてくれたわけではありません。でも、『今日はいつもより甘えにきてくれた!』『ウーと唸ることが1回もなかった!』など、毎日ほんの少しですが、なにか“ご褒美のようなもの”を感じることができます。
そのひとつひとつを積み重ねていくことが、私たちにとって大切な時間となっています。これからも、杢と土筆と過ごす日々を大切にしていきたいですね」
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