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2頭目を迎えて〜大吉の反応2【穴澤賢の犬のはなし】

2頭目を迎えて〜大吉の反応2

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初対面の福助に対して一度は激しく威嚇した大吉だったが、まず最初に力関係をはっきりさせておく、という意味合いだったのか、それ以降は攻撃的になることはなかった。しばらく様子を見守っていた一時預かりさんも、ひとまずは大丈夫そうとのことで福助を置いて帰っていかれた。それからは、また大吉が福助に襲いかかったらどうしようかと内心ハラハラしつつ、平静を装ってようすを見守ることにした。
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まず福助は、人間は恐がるくせにさっき威嚇されたばかりの大吉のことは気になって仕方ないらしい。しきりに大吉のあとをくっついて歩く。そんな福助を、大吉はやや迷惑そうな顔で、だけど拒絶することもなく、ある程度は好きにさせているようだった。そしてときおりこちらを向いては「ねぇ、こいつ何なの?」とでもいいたげな表情をするのだった。その日は福助も精神的にも肉体的にも疲れたのだろう、ほとんどケージの中で過ごしていた。
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しかし翌日には、福助は盛んに大吉に闘いを挑むようになった。闘いといっても遊びに延長のようなものだろうが、大吉に噛みつこうとしたり、飛びついたりしている。センターに保護された経緯から、あまり兄弟で遊んでいないと思われる福助がちゃんと甘噛みできるのかと思って見ていると、結構本気で噛みにいってるようだったので、大吉が怒ったらヤバイなと気が気ではなかった。
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が、予想に反して大吉はうまく手加減をしてやっているようだった。攻撃をうまくかわしつつ、しかも福助の目線に合わせるように「伏せ」をした状態で応戦している。福助はそんな大吉のことが大好きになったようで、遊んでほしくて、かまってほしくて仕方ないといったようす。
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ただ、子犬のしつこさたるや尋常ではなく、さらにムキになったりするので、手に負えなくなると別の部屋へ避難したり、ちょっとガルルと唸って威嚇したりするが、福助が自分より弱い存在であることを大吉は認識しているようだった。うざったそうにするのだが、本気で攻撃するようなことはない。遊び疲れて福助が寝ると、自らくっついたりもする。
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福助が来てからの大吉について、驚いたことがいくつかある。まずひとつは、わずか1日で大吉の顔つきが変わったこと。うまくいえないが、それまでのぽやーんとした顔から、どこか引き締まった、なんとなく頼りがいのある顔つきになったのだ。

これまで「ひとりっこ」として、どちらかといえば甘やかされて育ってきた大吉に、お兄さんの一面というか、手加減をしてやったり、自分の場所を譲ってあげたり、これほど包容力みたいなものがあるとは思わなかった。
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そして何より、福助というまだ人間とコミュニケーションがうまくとれない、何を考えているかわからない「犬」の登場によって、大吉はびっくりするほど人間と意思疎通ができることに改めて気がついた。
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これまでも空気を読んだり、言葉を理解しているっぽいと思ってはいたが、福助との比較によりそれが浮き彫りになったのだ。しかもなぜか福助が来てから、お手本を示そうとしているのか、意志の疎通度が増した気がする。

たとえば大吉に「掃除するからそこどいて」と言うとする。これまでだったらそれでもラグの上のでーんと伸びたまま、掃除機が近づいてはじめて面倒臭そうに移動していたのが、「そこどいて」と言っただけで「はいはい、わかってますよ」という態度でどいたりするようになったのだ。

そんなわけで、今まで大吉は人間の言葉をかなり理解していたくせに、いかに「聞こえないふり、わからないふり」をしていたのが明らかになったのだった。大吉め。
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