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2頭目を迎えて〜福ちゃんの気持ち〜その4【穴澤賢の犬のはなし】

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2頭目を迎えて〜福ちゃんの気持ち〜その4

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1カ月ほどかけて、ようやく我が家にも慣れ、心を開きかけていた福助。しかし一泊入院から戻ってきたら、また距離を置くようになったのだった。いったいなぜなのか……。

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一日ぶりに病院に迎えに行ってみると、そこにはムスッとした福助がいた。実は密かに今回一泊入院することで、福助の心に「もう、どこに行ってたんだよ!」とか「さびしかったんだよ!」とか、「早く家に帰ろうよ!」といった感情が芽生えるのではないか。そのことにより、距離がグッと縮まる、いうなれば起爆剤になるのでは、という淡い期待を抱いていた。甘かった。まったくもってノーリアクションとは予想もしていなかった。

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これが大吉だったら、おそらくしっぽをちぎれんばかりに振りながら、文句を言いたいんだけど嬉しい気持ちが上回ってしまうために「んぎょわわわわ〜ん」とかわけのわからない声を発したりするところなのに。まぁ生まれてこのかた怖い思いなんかほとんどしたことがない大吉と比べたら可愛そうだが、まさか無反応とは。

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身体に触っても怒りはしないが、「あの、やめてもらえます?」というどこかよそよそしい態度の福助。あれだけ好きだった大吉にも近寄らず、そっぽを向いている。病院から出て車に乗せようとしても拒むので無理矢理乗せて「さぁ、家に帰ろうか」と声をかけても無視。なんだその思春期のガキみたいな態度は、と思ったが犬でいえばまさに思春期のガキか、まだそこまでもいっていないくらいだろう。面倒くさいなぁと思いながら車を走らせる。

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信号待ちの度に振り返るが、福助は無表情のまま。迎えに来てもらった嬉しさもなければ、安心した様子もない。かといって、怯えている感じでもないから心底嫌ではないのだろう。見た目は落ち着いてはいるが、内心戸惑っている。そんな印象だった。いったいどこに戸惑う理由があるというのだ。

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ハンドルを握りながら考える。もしかしたら福助は、また別のところへ連れて行かれると思ったのかもしれない。これまで何度か移ってきたし、今回もまた別のところへ行くのだと。もうこの家にずっといていいんだぞと思って接してきたが、福助はまだそこまで信頼してくれていなかったのだろう。信頼しかけていたのかもしれないが、そんなときに病院に一泊したもんだから「あぁ、またか」と思ったのではないか。

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いずれにしても、いったんは縮まっていた距離がまたちょっと逆戻りしてしまった感じだった。しかも傷口を舐めないようにエリザベスカラーまで付けられているせいか、しばらくは不機嫌そうにしていた。

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「俺を信用しろ」という人間ほど怪しい奴はいない。しかも犬に言葉は通じない(自分に都合のいい言葉はすぐ覚えるが)。だから態度で示すしかない。福助から信頼を得るためにはどうすればいいのか、相変わらずよくわからなかったが、態度をころころ変えるのもよくないような気がしたので、以前と同じように接した。

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化膿止めの薬を飲ませようとしたり、包帯を取り替えようとする度に最初は嫌がって暴れたが、福助が暴れても封じこめることはできるので「悪いけど我慢してくれ」と強引にやった。そうやっていると、また少しずつ諦めてきて、一週間ほどでされるがままの状態に戻るのだった。トラウマとか知らねーよと思いつつ、小さい身体でいろいろ考えたり、葛藤したりしているだろうなーと想像すると、福助のことがなんだかとても愛おしく思えるのだった。

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