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不憫な大吉【穴澤賢の犬のはなし】

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先日、眠りながら夢を見ていた。どんな夢だったか覚えていないが、犬は登場しなかったと思う。が、どこかから「クゥ〜ン」と切ない犬の声が聞こえてきた。空耳かと思ったが、またしばらくすると「クゥ〜ン」とか弱い声が聞こえてくる。そこで目が覚めた。枕元の時計は午前3時だった。

大吉からのヘルプサイン

目をこすりながら辺りを見渡すと、暗い部屋のドアの前にうっすら大吉の顔が浮かんでいた。3階にある寝室のドアは常に開けっ放しにしていて、出てすぐ階段になっている。大吉は部屋の入り口でこちらを向いて座っており、私と目が合うと一瞬ハッとした顔をして、階段と私の顔を交互に見た。

「あ!」と気づいて私が飛び起きるのを確認すると、大吉はスタタタと大急ぎで階段を降りて行った。慌ててその後を追う。ダダダダと階段を降り、2階のリビングを素通りして、1階へと階段を駆け下りていく大吉に続く。大吉はスタッと玄関に飛び降りると、クルッとこちらを向く。私はその首に素早くハーネスを装着する。息のぴったり合った連携プレーだった。そして、ふたりして玄関から外に出た。

連携プレーで危機回避

家の前はほんのわずかに草むらがあり、大吉は一目散にそこへ向かってダッシュする。そして草むらですぐにウンチングスタイルになり、用を足した。後始末をすると、かなりゆるかった。用を足した大吉はホッとした顔で玄関に戻っていく。間一髪だったらしい。

再び寝室に戻り、ベッドに寝転ぶ大吉を見ながら思った。きっと寝ているときにおなかが痛くなったのだろう。だから私(か妻)を起こそうとした。大きな声でワンワン吠えればいいのに、なぜかクゥ〜ンと切ない声で。きっと何度も訴えたのだろう。もっと早く気がついてやればよかった。暗い中で、腹痛に耐えながら健気に起こそうとしている大吉を思うと、不憫で仕方ない。

が、そんなときのためにも、わが家がリビングの脇に犬用トイレがあり、随時トイレシートも敷いてあるから勝手にそこですればいいのに、と思う。ま、大吉なりにルールがあるんだろう。せめて今度からもっと大きな声で起こすように。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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