犬と暮らす
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Vol.10 アンチエイジング、住まう環境は?「 愛犬のすこやかアンチエイジング」
Vol.10 アンチエイジング、住まう環境は?
犬にとっても大切な住環境のこと
「自分の犬を飼う」というのが子どものころからの夢だった私は、10年前に「犬に優しい環境に住みたい」と考え引っ越しをしました。それが現在の住まいです。「古いマンションをリノベーションして住まう」と決めたのも犬と暮らすことが前提。こだわったのが壁と床でした。犬を迎えたとき、犬がいたずらして壁を掘ったり、誤って食べてしまったときに害が少ないものを。犬が走ってもツルツル滑ったりせず、足腰にやさしい床を……。
お世話になった建築家の先生と相談し、壁は漆喰に近いが素人でも塗りやすい自然素材のクリーム(自分たちで塗りました!)、床はロシアのから松を組み立てて作るのがメインで、ほかのスペースはコルクを貼ることに。専門家からすると少々時代遅れで「もっと効率がよくて便利な素材がありますよ」とも言われましたが、予算の少ない私たちにとっては、それが最善のことでした。
引っ越しから2年経ちセンパイを迎えることになりましたが、床には日々傷が増えていきました。最初はドキドキもしましたが「そう気にしていては大らかな犬に育たない」と考えをあらためて……(その後、床の傷は愛猫コウハイの同居によってさらに増えていきます)。
年齢とともに、環境を変えていく工夫
「犬の心身の変化によって住環境も変えていく」ということを、認識したのがこのときです。
そのひとつめがソファやベッドに掛ける犬用ステップです。若い犬たちは「ジャンプは得意だよ!」とばかりに1日に何度も飛び上がったり飛び降りたりしますが、フローリングへの着地は脚や腰の負担になります。
13才のミニチュア・ダックスフンドと暮らしている知人から「愛犬がある日突然、ソファに登れなくなってショックだった」と聞きました。飼い主としてはそのショックを顔に出さないように努めたそうですが、犬自身も「あれ、こんなはずじゃなかったんだけど……」と、なんともいえない泣き笑いの表情をしたとか。
「もし、もっと前からステップを置くようにしていたら、愛犬に悲しい思いをさせなくても済んだかもしれない。でも、過保護になりすぎてもよくないし……」と飼い主の心境は複雑です。犬と暮らすのは子育て同様、正解が見えにくいもの。しかし現実を受け止めて、的確に対処することがアンチエイジングにつながるのだと思います。
こういったセンパイ自身の鍛錬だけではなく、住環境と両面でサポートしてあげたいと思います
ふたつめがサークル。個体差もあると思いますが、老犬になると寂しがり屋になるといいます。読者の方からも「若いころはマイペースな性格だったのに、加齢とともに、家の人が出かけるのを後追いしたりして、一頭だけでいるのを嫌がるようになった」という声がありました。
なので、センパイが老犬になったら、リビングなど人の声や気配がする場所に居場所を作ってやりたいと考えています。目も見えにくくなってしまうかもしれないから、歩いてモノにぶつかったりしないようサークルで囲み、その中にベッドを置いてセンパイに「ここにいれば安心だわ〜ん」と思ってもらえるようにしたい。その延長として考えられるのは「引っ越しや家具の配置換えは老犬を不安にさせる」かもしれないということ。事情が許さない場合もありますが、できれば老犬介護をしているときは引っ越しや部屋の模様替えを控えたほうがよいかもしれません。
玄関や縁側、階段など落ちてしまう可能性があるところにゲートを取り付けることも必須だと考えています。
前回と今回は我が家とセンパイを取り巻く食事と住まいの環境についてご紹介しました。次回は、高円寺アニマルクリニックの高崎先生に食事や住まいについてお聞きします。
次回予告
高円寺アニマルクリニックの高崎先生からシニア犬の食事についてお聞きします
プロフィール
いしぐろゆきこ:愛犬誌や女性誌、WEBなどで日々の暮らし、犬猫に関するエッセイやモノのリコメンドを執筆。近著に『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』(幻冬舎)。
http://www.blueorange.co.jp/yuruyuru/
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