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犬は人に合わせて表情筋を発達させてきた!? 科学でわかった、犬の顔のスゴイ秘密

犬は本当に「表情」で気持ちを伝えているのでしょうか? 国内外の研究によって、近年その仕組みが科学的に明らかになってきました。飼い主さんとの関係や進化とも深くかかわる、犬の表情の秘密を獣医学博士の増田宏司先生に聞きました。

「なんか顔が似てる」は本当だった!

犬と飼い主の類似性について複数の研究をまとめたレビューから、外見だけでなく性格にも共通点が見られることが明らかになりました。

犬と飼い主、それぞれの写真からペアを当てるといった、さまざまな実験をレビュー

「犬と飼い主は似ている?」というテーマについて、複数の実験結果をまとめて検証した論文がドイツの研究者によって発表されました。代表的なのが、犬と飼い主、それぞれの写真から正しいペアを当てられるかを調べる実験。顔の一部だけでも当てられるケースも多く、見た目の類似は偶然ではないことが示されています。さらには外見だけでなく、社交性や不安傾向といった性格面にも相関が見られ、犬と飼い主は多面的に似ていることがわかってきました。
イラスト/フジマツミキ
イラスト/フジマツミキ
いっしょに暮らすうちにシンクロ してくる
長い時間、生活をともにするなかで行動や感情のパターンが少しずつ影響しあい、似た反応を示すようになるという説。不安になりやすい飼い主のもとでは犬も警戒心が強くなりやすいなど、日々のやりとりの積み重ねが、心身ともに〝似てくる関係〞を生み出しているのかもしれません。
最初から〝 似ている犬〞を選んでいる
無意識に〝自分に似た犬〞を選んでいるという説。人は見慣れたものや自分と共通点のある存在に安心感をいだく傾向があります。そのため顔立ちや雰囲気、さらには気質がどこか自分に近い犬を選びやすいと考えられます。見た目の類似は、この〝選択の段階〞ですでに生まれているといえそうです。

つまり、犬は人同士に近いレベルで相互に影響しあう存在

「これらをふまえると、犬と人の関係は単なる〝飼う・飼われる〞を超えたものだといえます。似ているのは偶然ではなく選びあい、そして影響しあう関係だから。外見や性格、さらにはしぐさや表情にまで共通点が生まれるのは、人同士の関係にも近い、深い結びつきがあるからなのです」(増田先生)

犬の本音は"左右差"からわかる!

犬がニオイをかぐ〝表情〞にはじつは左右の違いが表れています。その使い分けを読み解くことで犬が何を感じているのか、本音に近い反応が見えてきます。

犬にとって危険なニオイと安心する ニオイ、どちらの鼻の穴でかぐか分析

ふだんなにげなく見ている愛犬のニオイかぎ。イタリアの研究チームはこの行動に注目しました。犬30頭に対して、フード、発情中のメスの分泌物、レモン、獣医師の汗、ストレス物質であるアドレナリン、無臭の綿の6種類のニオイをかがせて、その反応を動画で記録。すると、ニオイによって左右の鼻の使い方に違いが見られました。犬は単にニオイをかぐのではなく、その意味を判断しながらかいでいる可能性が示されたのです。さらにこの結果は、左右の脳が異なる役割を担うという「側性化」の特徴とも一致していました。
イラスト/フジマツミキ
イラスト/フジマツミキ
左の鼻の穴でかぐ=フード・分泌物・レモンなど、ポジティブなものへの反応
フードや分泌物、レモンといった、好きなニオイあるいは興味の対象となるニオイでは、最初は右でかぐものの、回を重ねるうちに左の鼻の穴へと移行する様子が見られました。左側は日常的な行動や安心感に関係する左脳とつながっていて、慣れや受容のサインと考えられます。
右の鼻の穴でかぐ=汗・アドレナリンなど、ストレスなものへの反応
獣医師の汗やアドレナリンといったストレスや警戒にかかわるニオイに対して犬は一貫して右の鼻の穴を使う傾向が見られました。右側からの情報は危険回避やネガティブな感情と関係する右脳へと伝わります。つまり、右でかぐ行動は「注意すべき対象」への反応といえそうです。

つまり、〝左右差〞に注目することで本能レベルでかなり高度な情報処理をしていることがわかる

「このように、犬はニオイの性質によって左右の鼻を使い分けています。クンクンとかぐときの表情に注目すれば、その対象への〝好き・苦手〞が見えてくるかもしれません。なにげないしぐさの裏には、本能に基づく高度な情報処理が隠されているのです」(増田先生)
近い将来、これまで不思議だった犬の行動や表情、しぐさの本当の意味が、科学的にさらに明らかになるかもしれませんね。
お話を伺った先生/獣医師。博士(獣医学)。東京農業大学農学部動物科学科(動物行動学研究室)教授。増田宏司先生
参考/「いぬのきもち」2026年7月号『ほら、やっぱり犬は飼い主さんに“顔をつくってる”!』
イラスト/フジマツミキ
文/ヨシノキヨミ
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