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「散歩中に出会った子どもを噛んだ」と無実の罪で愛犬が訴えられた!

ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!

過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。

今回ご紹介するのは、大阪高等裁判所で平成22年5月20日に判決が出た事例です。

※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。

お話してくれたのは……渋谷 寛先生

弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。

公園での散歩中、野球中の子どもに愛犬が吠えた!

太ももの赤くなった傷を「噛み痕」と判断して訴訟に

太ももに赤っぽい2つの傷あとがあった(イラスト/別府麻衣)
太ももに赤っぽい2つの傷あとがあった(イラスト/別府麻衣)
早朝、Aさんが愛犬と公園で散歩をしていると、父親たちと野球をしていた7才の子どもが愛犬のそばを走って追い越していき、愛犬が子どもに近づいて吠えかかる出来事がありました。その後、子どもが犬に噛まれたと言ったため、父親のBさんがズボンを下ろして見ると、子どもの左の内ももに2つの赤いあとが。Bさんは、すぐに子どもを病院に連れていき、「犬の噛み傷だ」と診断を得るや、警察に被害届を提出。簡易裁判所での第一審で、飼い主さんは、過失傷害の罪で罰金5万円を支払うよう命じられてしまいました。

子どもの証言にはあいまいな点も多かった

「愛犬は子どもを噛んでいないはず……」有罪判決に不服を覚え、控訴したAさん。高等裁判所では、あらためて、犬が子どもを噛んだかどうかの検証がなされました。裁判所は、子どものはいていたズボンに穴があいていなかったことに着目。ズボンに噛みあとを残さずに子どもの太ももを傷つけるのは不可能だと推論しました。また、そもそも、医者が太ももの傷を「噛み傷」と診断したのは、父親のBさんの「犬に噛まれた」という発言が根拠だったこと、子どもの「噛まれた」という証言は、状況など細部があいまいで、Aさんを快く思っていなかった父親に影響されての発言だろうということにも言及。「犬が子どもを噛んだ」とした第一審は、事実に誤認があったとして、飼い主さんを無罪としました。

判決は……飼い主さんが逆転無罪となった!

過失傷害で有罪だとした一審の判決がくつがえった(イラスト/別府麻衣)
過失傷害で有罪だとした一審の判決がくつがえった(イラスト/別府麻衣)
Aさんの愛犬は、子どもを噛んではいなかったものの、近づいて吠えかかったために、あらぬ誤解を招いてしまいました。思わぬトラブルに巻き込まれないためにも、とくに小さな子どもが近くを通るときは、愛犬のリードを短く持って、万一の事故やトラブルを防ぐようにしましょう。

参考/『いぬのきもち』2015年9月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/別府麻衣
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