1. トップ
  2. 犬が好き
  3. 連載
  4. 犬ってホントは
  5. 犬はいつも頭の中で「こういうときには→こうすれば→こうなる」と学習している|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.85

犬が好き

UP DATE

犬はいつも頭の中で「こういうときには→こうすれば→こうなる」と学習している|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.85

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
前回は、犬の学習理論の基となる「パブロフ型条件付け」を紹介しました。今回は、それと並んで有名な「スキナー型条件付け」のお話。何やら難しい専門用語ですが、要は犬の頭の中で「こういうときには→こうすれば→こうなる」と学習しているのだそう。これを知っておけば、愛犬がなぜその行動をとるのか、ますます理解できるようになりますよ(編集部)。


一時ディンギー(小さなヨット)を所有していました。
あるとき穏やかな空の下、いかにも海に詳しそうな人たちが「これは、どんぶくな」と、西の空を見て口にしていました。
海通いを始めて間もない、海のことをあまり知らない頃の話です。
こちらはなんだかよくわからない、天気もいいし風もいい感じなので、海に出ていった。
しばらくすると、なんとあれよあれよという間に大粒の雨が落ち始め、風が強くなり、嵐のようになってしまったのです。
「どんぶくな」という言葉を耳にしたときに、西の空が暗くなっていたことに気づいてはいました。
しかし、その後すぐにそのようになるとは……
この一件で、その浜で「西の空が急に暗くなる」は「天気が急変する」前触れと知り、そんなときは海には出ない、逆にディンギーを早々に陸に上げる、そう行動するようになったのです。
「こういうときには」「こうすれば」「こうなる」ということを、体験を通じて学んだということです。

若かりし頃ディンギーを置いていた三浦市三戸浜。ディンギーの保管場所もクラブハウスも今はない
Can! Do! Pet Dog School

「こういうときには」「こうすれば」「こうなる」が記憶できない動物は淘汰されている?

「こういうときには」「こうすれば」「こうなる」には4つあります。
ディンギーの例は、
①「ある状況で結果的に嫌なことが起きた行動はその状況でとらなくなる」、
②「ある状況で結果的に嫌なことがなくなった行動はその状況でいつもとるようになる」という2つ。それ以外にも、
③「ある状況で結果的にいいことが起きた行動はその状況でいつもとるようになる」、
④「ある状況で結果的にいいことがなくなった行動はその状況でとらなくなる」があります。

例えば、獲物を捕まえるという行為。
ある場所である行動を取ったら獲物が捕まえられた。であればそれを記憶し、獲物を得ようとするときにはまたその場所に行って同じ行動をとる。
でも、その場所でいつもの行動をとっても獲物が捕まえられなくなったら、場所を変えたり行動の手順を変えたりします。
こうした経験に基づいた学習ができない動物は、獲物を捕まえるためのエネルギーロスが増える(獲物が捕まえられない)。結果、生き延びられず、子孫も残せず結果的に淘汰されてしまっている。

ディンギーの例の①「結果的に嫌なことが起きた行動はとらなくなる」、②「結果的に嫌なことがなくなった行動は習慣化する」に関しては、その学習がなされなければ、危険回避ができずに生き延びられない。こちらも同様に、結果淘汰されてしまっている。

すなわち現存する動物は、「こういうときには」「こうすれば」「こうなる」、の4つ行動原則を身につけているということです。

実際の犬の行動に当てはめると

例えば、他犬とのすれ違い。
相手に吠えたててしまい、上手にすれ違いができないとすれば、それは②「こういう(他犬が近づく)ときには→こうすれば(吠えれば)→こうなる(相手はいなくなる)」、という体験を過去の経験に基づき習慣化しているということ。

別の行動原則に則っているケースもあります。

それは、③「こういう(他犬が近づく)ときには→こうすれば(吠えれば)→こうなる(犬と遊べる)」、という場合です。
好ましい行動の教え方、合図の教え方を、すでに過去のコラムでお話ししていますが、それも行動原則のひとつを利用しています。
例えば③「こういう(歩いているときに“ヒール”という音の響きを耳にした)ときには→こうすれば(止まらずに飼い主を見上げれば)→こうなる(ほめてくれる=初期の段階ではフードがもらえる)」、というふうにです。

犬の行動は、全てこの行動原則に則っているといっても過言ではありません。
問題となる行動の要因を見つけるにも、合図も含めて好ましい行動を教えるにも、4つの行動原則(①②③④)を知っていることがとても重要となる。そういうことなのです。

こういう(歩いているときに“ヒール”という音の響きを耳にした)ときには→こうすれば(飼い主を見上げて歩けば)→こうなる(ほめてくれる=初期の段階ではフードがもらえる)」。これを体験記憶させることで、合図も含めて好ましい行動を習慣化させていく
Can! Do! Pet Dog School

あれ? 前回の予告「スキナー型条件付けの話」が出てきていないって?

いえいえ、「スキナー型条件付け」を噛み砕いて説明すると、この4つの行動原則のようになるのですよ。ちなみに、スキナーとはこの4つの行動原則の研究の横綱のような人。

前回の「パブロフ型条件付け」のように研究者の名前を冠するのであれば、「スキナー型条件付け」とするのがしっくりとくる。
しかしながら実のところこの2つ、一般的には「古典的条件付け」と「オペラント条件付け」と称されている。
どうでもいい話ですけど、コレ、なんか違和感を感じませんか?
「古典的」は日本語なのに、「オペラント」は海外の言葉。表記の統一感に欠けている。

しかも、オペラント条件付けには「道具的条件付け」っていう日本語表記が、古典的(条件づけ)の方には、レスポンデント(条件付け)という外国語表記がちゃんとある。
にもかかわらず、それがなぜに、どうして、古典的条件付けとオペラント条件付け、と統一感に欠けた表記で広まったのであろうか?

まぁ、どうでもいい話なのでそれはそれとして、冒頭の「どんぶき」の一件。
ディンギーにはカミさんも乗っていましてですね、これまでの人生で「これは死ぬかもしれない」と心底、恐怖を感じた唯一の出来事、だそうです。
え? これこそどうでもいい話? 

文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(11才)ともにオス/ミックス。

CATEGORY   犬が好き

UP DATE

関連するキーワード一覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬が好き」の新着記事

新着記事をもっと見る