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最近の飼い主さんが知らない「パブロフの犬」の話|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.84
今回は「パブロフの犬」について。西川先生によると、この話は犬のしつけと関係していて、知っているとしつけがよりうまくいくのだそう! ただ、最近の飼い主さんは知らない人も多いとか。まずは「パブロフの犬」の話を、西川先生がわかりやすく解説します(編集部)。
なんの話かというと、最近はパブロフの犬の実験の話を知らない人が多いということを知らなかった、という話。
なんで、そこに気がついたかというと、セミナーでの反応。
私の教室では、クラス参加にあたり、事前に「科学的な理論に基づく新しい犬のしつけ方セミナー」と銘打ったこのセミナーを受けてもらいます。
そのセミナーでパブロフの犬の話をするのですが、「はいはい」という感じで頷いてもらえていたものが、いつかしら「?」マークがいくつも頭上に漂わせているような、そんな表情を浮かべる人が増えていったのです。
それはなぜなのか? 最近になってその理由がわかった次第です。
義務教育で教えていない
義務教育で教えなくなったのですから、知らないのは仕方がない。
パブロフは、生理学者。心理学者でも動物行動学の研究者でもなく、胃酸や唾液の分泌を研究していた人物。
犬の唾液腺の研究中、餌が運ばれてくる気配(足音)で犬の唾液の分泌が起きることに注目し、次のような実験を行った。
餌を目の前にすると唾液の分泌が起こる。餌とは無関係なメトロノームの音を聞かせても唾液の分泌は起きない。
そこで、餌とは無関係なメトロノームの音を聞かせた直後に餌を与えてみる。
するとどうでしょう、やがて犬は……。
無条件反射と条件反射
餌は無条件で唾液を増やすので、餌を目の前にしたときに唾液を増やすことを無条件反射、先程のプロセスを経たのちにメトロノームで唾液を増やしていくことを条件反射と呼ぶ。
まぁ、大雑把に説明するとそんな感じです。
パブロフはこの条件反射の研究で1904年にノーベル賞を受賞しています。
条件反射、これイコール、学習の心理学における「古典的条件付け」。ただ古典的条件付けでは、条件反射を「条件反応」と呼びます。
学習の心理学は、パブロフがノーベル賞を受賞した以降少し経ってからさかんになった研究分野です。古典的条件付けは、ある意味パブロフの功績の上にある。
そのためでしょうね、古典的条件付けは「パブロフ型条件付け」とも呼ばれています。
脳の反応でも確認されている
パブロフは唾液の分泌の反応を見たわけですが、脳科学では脳の反応を見る。
食事を与えたときに反応する脳の部位を特定する。特定の音(例えばメトロノーム)や光の刺激を与えてもその部位は反応しない。しかし、特定の音や光の刺激を与えてから食事を与えると、食事を与えたときに反応する脳の部位が反応する。まぁ、そんな感じです。
もっとも最近のセミナーでは、パブロフの名前も知らない人も多いので小難しい話はざっくり端折って、「要は前触れを犬は理解していく」と説明しています。
「イイコ」と声がけしたあとに「フードを与える」ことを繰り返せば、犬は「イイコ」という言葉を耳にすると、「フード」がもらえる状況と理解し喜ぶようになる。
押さえつけられていた犬は、手が近づくことは押さえつけられることの前触れと理解し、手を怖がるようになる。
犬と生活するうえで、パブロフ型条件付は随所で確認できることです。
そして、それを知っているのと知らないのでは、犬との生活は大違いとなります。
問題行動を理解するにも、それを改善するためにも、予防するためにも、犬をハッピーにするためにも、知っている必要があるからです。
さて、パブロフ型条件付けと同様に知っておくべき条件付けはもうひとつあります。それは、スキナー型条件付け。
そちらに関しては次回へ持ち越しにいたしましょう。
もちろん、わかりやすく記しますから、お楽しみに。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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