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悩ましい大吉の弱点 【穴澤賢の犬のはなし】

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先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

何事にも寛大で物分りが良く、聡明な大吉の唯一の弱点は「音」だ。具体的には花火と雷と暴走族の音にやたら怯える。その他のことであれば、初対面の人にも自分より大きな犬だろうと臆することなくフレンドリーに接することが出来るのに、花火の音が聞こえると小さくなってブルブル震える。

年々怯え度が増している!?

残念なことに、今暮らしている神奈川・腰越は夏になると毎晩のように若者が砂浜で打ち上げ花火をするし、しょっちゅう暴走族が走っている。それはそれとしていい加減慣れればいいのにと思うが、まったく慣れることなく、年々怯え度が増している気さえする。

この前など、突然江ノ島で大きな打ち上げ花火が上がり始めたのだが(サプライズ花火大会だったらしい)、私にぴったりくっついて来てドーン!ドーン!!と低音が響いてくる度にブルブル状態がひどくなり、泡でも吹くんじゃないかと心配になるほどだった。

また夏のある日、急に空が暗くなったかと思うと、ピカッと光り、続いてゴロゴロドッカーン!と近くで轟音が鳴り響き、その瞬間に仕事中の私の膝にぴょんと飛び乗ってきた。怖いのは分かるが、私はパソコンに向かっていたので、とてもじゃまだった。

海岸に出るまでの試練

まぁ怖いものは怖いのだろう。ただ、家の中だとそれでもいいのだが、外ではちょっと困ることがある。毎日砂浜を散歩しているのだが、海辺に行くには道を渡らないといけない。そこで信号待ちをしているときに、足がブルブル震えているのだ。

おそらく海沿いの道は暴走族がよく通るから、また来るかもしれないとビビっているのだろう。そんなに怖いなら砂浜に行かなければいいじゃないかと思い、山の方へ行ったこともあるのだが、そうするとなかなかウンチをしない。だから仕方なく砂浜へ行くと、すぐにする。

きっと大吉の中では「砂浜=トイレ」なのだろう。不思議なのは、砂浜に向かうときの信号待ちでは震えるのに、用を足した帰りに信号待ちをするときはまったく平気そうという点だ。すっきりしたらもう怖くないのだろうか。謎すぎる。

なら行きに信号待ちをしているときに震えるのは止めて欲しい。なぜなら通りがかる人が、震えている大吉を「なんか怯えてる、可愛そう」と憐れむ目で見るからだ。この前も信号待ちをしていると、犬好きそうな男性が「すごい震えてますね」と話しかけてきた。

話しかけられれば「こいつ、バイクの音が怖いんですよ」と答えられるが、無言で通りすぎる人に「あ、実はこれは」わざわざ理由を伝えるのも変だし、逆に怪しい。もしかして虐待でもしてる?と思われているかもしれないが、そこは無言で耐えるしかない。

震える大吉に目を向けながら通りすぎる人を、そんな気持ちで見送っている。大吉の弱点とはいえ、そこは勘弁して欲しいと思う。不思議なのは、それだけ怯える大吉の隣にいる福助は、心配するでも気遣うでもなく何事もないように平常心でいることだ。気持ちいいくらい他人事で。そうすればいいのか。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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