先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
大吉はもう10才を過ぎている。なのに足取りは軽く、動きはしなやかで、走っても福助より速い。未だにボールを投げてと催促してくるし、福助ともよくバトルを繰り広げている。
10才の犬はお年寄り?
犬の10才といえば、もっとおじいちゃんみたいになると思っていたが、大吉はほどんど老いを感じさせない。定期的な健康診断でも異常はないし、白内障の前兆も見られない。
そんな若さを保つ秘訣はなんなのか。食事や適度な運動はもちろんあると思うが、メンタルの影響も大きいのではないかと思う。彼らがうれしそうにするからというだけの理由で、山にボロ小屋を買ったし、うっそうとしていた雑草と格闘しながらプライベートドッグランも完成させた。
40代後半まで草刈りはおろか、草むしりすらしたことがなかったのに、今ではチップソー用とナイロンカッター用の2台の草刈り機を所有している。さらに草刈りをしただけの土むき出しだと足がドロドロになるからと、林業の知り合いからウッドチップを大量に買い、それを担いで坂道を何往復もして、2頭には十分な広さのドッグランに敷き詰めた。
2頭の関係性が元気の秘訣か
そんな苦労もあったが、おかげで山の家に行く度に大吉は目を輝かせてドッグランを走り回っている。ただ、大吉が若くいられる1番の理由は、福助ではないだろうか。好き勝手やりたい放題の弟に本気で怒ることはなく、あしらったり付き合ったり呆れたりしながらいつも一緒に遊んでいる。そういう存在が刺激になっているのだろう。
その福助だってもう7才で、犬ではシニアになるのだが、なぜかまだ精神年齢はガキンチョのままだ。きっと大吉という甘えても許してくれる存在がいるからだろう。相乗効果というものだろうか。
それはそれでいいのだが、人が苦労して運んだウッドチップを掘り起こすのは止めてほしい。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。