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初対面の犬にやってはいけないしぐさ|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.131
今回は、犬が発しているボディランゲージのお話。「カーミングシグナル」と分類されるボディランゲージの中で初対面の犬にやってはいけないしぐさ・行動を、西川先生が解説します(編集部)。
「この問題解ける人?」
と席を見回しています。
そのときあなたはどういったしぐさを見せるか。
もしあなたが先生に当ててほしくなかったら、あなたは先生とは目を合わないように、顔を伏せるはずです。
それも無意識に。
「私は先生に注目していないでしょ、だから先生も私に注目しないで」
しぐさで、そう無意識に訴えているわけです。
こうしたしぐさを犬も見せます。
ご存じの方も少なくないと思います。そう、カーミングシグナルです。
相手の心を落ち着かせるボディランゲージ
提唱者はノルウエー人のトゥーリッド・ルーガス女史とされていました。
当時のテキストをひも解くと「ノルウェー流安らぎの合図」と紹介されています。
先の視線を外すしぐさは、「あなたに何かする気はない」「あなたも私に何もしないで」ということが相手に伝わる。前者は相手のストレスを軽減する効果があり、後者は争いを避ける効果があます(授業の場合は教師と争う訳ではありませんが……)。
相手のストレスを軽減させる、争いを避ける。これは、相手を落ち着かせるということでもあります。
翻訳サイトで「Calming Signal」と打ち込むと「心を落ち着かせる信号」と返ってきます。
ここで上げてきたカーミングシグナルの例は、すなわち「相手の心を落ち着かせるボディランゲージ」ということです。
自身の心を落ち着かせるボディランゲージ
スポーツや何かの発表の、いざ本番というまさにその直前に、あなたは今います。
そのときあなたは、力を抜いて肩を上下させたり、体をぶらぶらさせたり、軽いストレッチをしたり……といったしぐさをしませんか?
そう、体をほぐすしぐさ。
なぜ体をほぐす必要があるのか。それは緊張で体が固くなっているからです。
体と心は同調関係にあります。体の緊張をほぐすためというのは心の緊張をほぐすためでもある。
体をほぐすしぐさは、相手ではなく「自身の心を落ち着かせるボディランゲージ」の場合もあるということです。
犬も見せます、同様のしぐさを。
例えば「ブルブルと体を振る」というアレがそうです。
ストレスサインとしての理解
すなわち、犬が「ブルブルと体を振る」しぐさを見せたときは、ストレス状態にあるかストレス状態にあったかを意味している。そうしたケースもあるのです。
こうした理解(カーミングシグナルの理解)は、犬と仲良くなる、犬との共生を目指すためには不可欠です。
なぜなら、そのストレスの原因があなたかもしれないからです。であればその状況を変え、ストレス軽減にあなたは努めないといけません。
ストレスをかけてくる相手とは仲良くなれません。仲良くなれない相手とは共生は望めないからです。
もっとも共生など望むべくもない、犬は服従させる存在と考えているのなら(昭和の時代の犬との関係を望んでいるのなら)、その限りではありません。
ちなみに、昭和の時代は、犬とのファースト・コンタクトでは視線を外してはいけない、とされていました。視線を外すのは、負けを意味するから。勝ち負けとは力の優劣を、支配・服従関係をそこに求めているから。
仲良くやっていこうとするのであれば(共生を望むのであれば)、初対面ではやってはいけないしぐさのひとつなのです。
犬への視線を外す。このしぐさは明らかに初対面での犬へのストレスを軽減させる効果がある。
そうカーミングシグナルの中には、我々が示すと犬に伝わるしぐさがあるのです。
さてここからが……といった感じではありますが、続きはまたも次回に持ち越すということで。今回はこれにて失礼いたします。
西川文二氏 プロフィール
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