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放任主義な飼い主さんと、過干渉な飼い主さん|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.130

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
西川先生の単発のしつけ相談会に訪れる飼い主さんたちを見ていると、放任主義の飼い主さんと、過干渉な飼い主さんが多いそう。 放任主義と過干渉は、犬にとって何がよくないのでしょうか? バランスの取れた犬の育て方を考えます(編集部)。

放任主義と過干渉。
鑑別所や少年院にやっかいになる子どもたちを調査すると、そんな親の姿が浮かび上がってくる。そうした報告をかつて目にしたことがあります。
なかでも母親が過干渉で父親が放任主義、という組み合わせが一番よくないとも。
放任主義とは聞こえがいいが、要はほったらかし。好ましい行動を教える努力をしないということです。
私の元には、コンパニオン・ドッグに育てるための知識を得たいとやってくる、犬をこれから迎えるという飼い主(候補?)たちから、問題をすでに抱えていてその改善のために藁をもすがる気持ちでやってくる飼い主たちなど、さまざまな飼い主が訪れます。
多くの飼い主を相手にして感じるのは、問題を抱えてしまう(イメージ通りの犬に育てられない)飼い主の特徴はまさに「放任主義的」あるいは「過干渉的」。
人間の子どもたちと変わらないということです。

好ましい行動を教えない(=放任)は、問題を生み出す

しつけなんてかわいそうなこと。
最近はあまり耳にしなくなりましたが、かつてはそうしたことを口にする人(飼い主ではない場合がありますので)も少なからずいました。
ちょうど番犬からコンパニオン・ドッグへと、日本人の犬へ望む姿が変化していった時期に多かったかと思います。
求める姿が番犬ならそれでもいいかもしれませんが、リビングを自由にさせ、お出かけにも旅行にも連れていくことができ、楽しい時間を共有できる。そうした姿を犬に望むのであれば、好ましい行動をたくさん教える必要があります。
好ましい行動を教えること。これイコールしつけと言ってもいいわけです。
好ましい行動を知らなければ、犬たちは本能に基づく行動を行うだけです。例えば、やりたいところで排泄をする。トイレでの排泄を教えなければ、いつまでたってもリビングを自由にはできないのです。
好ましい行動を教える努力をしないのが放任ということであれば、まさに放任はイメージ通りの犬に育てられない原因となるのです(もちろん番犬を望んでいるのであれば話は別ですが)。

オスワリとお手とオアズケを教えている程度では、何も教えていないのと同じ(=放任)。番犬にはなってもコンパニオン・ドッグには育たない
Can! Do! Pet Dog School

一生懸命教えているのに、なんでできるようにならないの

しつけも含め、十分なことを犬にしてあげたい。
放任とある意味真逆な考えで、それ自体悪くはないのですが、度が過ぎるとこれも問題が起きてきます。
度が過ぎるとは、一生懸命になり過ぎるということ。
「しつけのトレーニングは訓練とは違いますよ。オスワリを教えるのであれば、お尻を床につけると景品(=フード)がもらえるといったゲーム感覚で行ってください」。そう指導しますが、一生懸命になり過ぎるとそれができない。

「オスワリ」の合図は、第一ヒント。第一ヒントでできなければ第二ヒントを出してあげる。それがゲームとして成立させるために必要なのですが、どうしてもそれができない。
「オスワリ」の合図だけで、どうしてもやらせようとする。
第一ヒントでできないのに、第一ヒントを出し続けられる。できないことを要求し続けられるわけで、犬は多大なストレスを感じる。
結果、犬はますます合図に反応しなくなる。
やらせようとすればするほど、犬はやらなくなる。そういうものなのです。
やらせようとすればするほど、犬はやらなくなる。これまた、イメージ通りの犬に育てることはできない
Can! Do! Pet Dog School

ちょっとしたことが気になってしまう、も要注意

一生懸命になり過ぎる飼い主は、神経質になり過ぎる傾向もあります。
それらも問題を生み出します。

ほとんどの飼い主なら気にしない程度のことが頭から離れなくなり、電話を頻繁にかけてくる。かつて知り合いの獣医師から、そうした飼い主の話を聞いたことがあります。
実はその飼い主は、私の知り合いのインストラクターのクライアントでもありました。
嫌がることは無理やり行わず、少しずつ慣らしていく。そうしたアドバイスをしていたにもかかわらず、歯周病予防をしなくてはという考えが先に立ち、嫌がる犬を無理やり抑えて歯みがきを行っていたようです。
やがて飼い主を本気で噛みつくようにもなっていった。

知り合いのインストラクターは、自身の力不足を嘆いていましたが獣医師からの話も合わせると、獣医師やそのインストラクターの問題よりも飼い主に問題があるように感じたものです。
ちょっとしたことが気になり不安になる。飼い主の不安は犬に伝わる。結果、犬は常に不安と戦っている状態となる。
一生懸命になり過ぎる、神経質になり過ぎる。これら(いうなれば過干渉)もイメージ通りの犬に育てられない原因となるのです。

放任主義と過干渉。
読者のみなさまにおかれましては、くれぐれもそうならないように、ご注意を。
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(17才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。
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