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犬・猫と暮らすこと 犬と食事を考える〜その2【穴澤賢の犬のはなし】

Vol.15 犬と食事を考える〜その2

いぬのきもちweb
写真右より、奈良なぎささん、穴澤
大吉はまもなく2才になるが、あまり手のかからない犬ではある。
そんな大吉の最大の悩みといえるのが、食について。とにかく食が細いのだ。食べ物に対する執着心があまりないらしい。犬というのは、何をあげてもガツガツ食べるものではないのか?
その悩みを解決すべく、動物病院向け栄養相談を行う「ペットベッツ栄養相談」を主催し、ペット栄養コンサルタントである奈良なぎささんを大吉の暮らす我が家にお招きしてお話を伺ってみました。前回は大吉の食の遍歴について相談をし、今回はその回答から始まります。

犬の食事量を減らすこと、バランスについて

穴澤:それまでもりもり食べていた犬が、ある日突然食べなくなるのは珍しいことじゃないんですか?

奈良:ええ、よくあるパターンで、たいてい生後6〜7カ月のころに食べなくなるんです。小型犬や中型犬だと、生後7カ月くらいでほぼ成犬と同じ体重になるんですね。今まで右肩上がりに増えていた体重が、落ち着いて平らになる時期です。

穴澤:たしかに大吉もそうでした。
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奈良:体重が増えると食事の量も増やさなければいけないという感覚ですが、実は逆なんです。

穴澤:えっ!そうなんですか。
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奈良:体重が増えてきたら本当は食事の量を減らしていかないといけないんです。でも、減らすタイミングがたいていうまくいかず…飼い主さんとしては食べないと心配じゃないですか。

穴澤:はい、まさに。

奈良:犬の成長期の体重増加線は2回あります。最初は生後4〜5カ月までで、このときは右肩あがりにどんどん体重が増加します。このころに成犬予想体重の約50%に達していれば順調に成長している目安になりますね。

穴澤:きちんと食べていると、この基準はクリアできそうです。

奈良:そして次が6〜7カ月ころですが、この時期の体重増加は以前よりもゆるやかになります。体重は成犬時と同じくらいになりますが、まだ筋肉や骨は十分に成長していないので成長期と考え、成長期用フードを与えます。でも身体は成犬に近づいており体重増加もあまりなくなるため、以前よりも必要とするエネルギー量も減ってくるのです。そのため、最初は4〜5カ月のころ、次は6〜7カ月ころに、食事に必要なエネルギー量や摂取量を調整することが大切なんです。

穴澤:なるほど。

奈良:ところが食べないと心配な飼い主さんは、食事がおいしくないから食べないのだと思い、この時期に犬が好きそうな食べ物をその食事に追加してしまう傾向があります。犬も自分の好きな食べ物が出るので最初は喜びますが、そのうち身体が「もういらないよ~」って悲鳴を上げてしまうんです。このような状態が続くと食欲不振や下痢などになってしまうことがよくあります。

穴澤:そうだったのか。
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奈良:成長期も最後になってくると体重が一定になってきます。そうすると身体もタンパク質や脂肪が多く入っている子犬用フード欲しなくなるんですね。ただ一方で身体はまだ完成しきっていないので12カ月ころまでは子犬用のフードを与えたい。この矛盾を解決するには摂取エネルギー量を上手に減らすことが大切なんです。でも、一般的に飼い主さんは食べないと不安なのでこれを実践できる飼い主さんは少ないですね。

穴澤:確かにできないです。ただただ食べないから心配になって、あれこれフードを試したり、手作りにしてみたり。

奈良:タンパク質や脂肪が必要以上に多い食事は犬の肝臓に負担がかかります。肝臓が疲れると食欲が落ちるのですが、飼い主さんは原因がわからないので「何でだろう?」と思ってします。 ここが落とし穴なんです! 飼い主さんと犬のギャップですよね。

穴澤:そうだったのかぁ。
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奈良:そういうことを繰り返していると腸内細菌叢も崩れ、栄養吸収がうまくできなり、下痢とか軟便などの症状が出るんです。とくに大吉くんみたいに頭がよくて慎重な犬は学習能力が高いので、それまで食べることが大好きだったのに食べることで自分の体に嫌なことが起こった、例えば吐いたり下痢をしたり、それを記憶してしまうので、新しい食べ物に対してすごく慎重になってしまいます。

穴澤:あぁ思い当たる節があります。ひどくはなかったけれど、下痢とか軟便とか吐いたりもしていました。

奈良:このような場合は一度食事の量を減らして腸内細菌叢をできるだけ早く整えることが必要なのですが、飼い主さんはご飯を与えないとやせると心配してなかなかこれができません。でもこの状態だと食べても上手に消化吸収できないので、体重も増えないしウンチの状態も改善されない。犬は調子が悪いし、飼い主さんはどうしたらいいかわからない…ものすごい悪循環ですよね。
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穴澤:大吉がまさにそうかも。飼い主としてはもっと太ってほしいのですが。

奈良:大吉くんの手作りごはん、ささみと野菜と芋類と言っていましたが、割合はどのくらいでした?

穴澤:半々もしくは、肉が少し多めくらいですかね。

奈良:半々だとおそらくタンパク質が多すぎると思います。特にささみは消化吸収率が高いのでなおさらですね。タンパク源は種類によって含まれているタンパク質の量が違うんです。

穴澤:そうなんですね。吸収率が違うのか。肉も量を与えるだけではダメということですか。

奈良:なので「量を食べさせる必要がない」のではなく「大吉君にとって必要なタンパク質量を与えているかどうか」が大切だということです。栄養素すべてに当てはまりますが、過剰でも不足でも身体にとってマイナスなんです。

穴澤:ぜんぜん知りませんでした。
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奈良:飼い主さんは食事にお肉をたくさん入れると犬も喜ぶし、身体にもよいだろうと考えます。しかしどんな栄養素にも「個体に適した必要量」というのがあり、さらにそれを消化吸収して身体が利用できるようにするためには、エネルギーが必要です。そのため、いくら肉食の犬とはいってもある程度の炭水化物が必要なんです。もっとも消化がよい炭水化物源は「白米」です。

穴澤:お米ですか!?

(つづく)
次回予告
食事改善の中に出てきた「白米」 の理由は? 次回もアドバイスが続きます
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