先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
富士丸と暮らしている頃から、彼らの健康管理には気をつけてきたつもりだ。定期的な健康診断や血液生化学検査はもちろん、さり気なく触って何か違和感があれば動物病院で診てもらうようにしてきた。
大福の定期検診は欠かさない
それでも富士丸は7才半という若さで突然死してしまったが、基本的なスタンスは今も変わらない。だから大福にどんなに嫌がられても動物病院に連れていき、定期的に検査を受けている。ダニ・フィラリア予防の薬も一度に貰わず、あえて2カ月に1度もらいに行くようにしている(その度に触診してもらうため)。
歯磨きにしても、子犬の頃からほぼ毎日やってきた。それでも少しずつ歯石がたまってきたなとは思っていたが、遂に先日の検診で獣医から「そろそろ綺麗にとったほうがいいですね」と言われた。口臭はそんなにないが、もう立派に歯周病のレベルだという。
大吉は11才になるから、仕方ないのか。骨とか硬いものを食べているせいで年齢のわりには歯が綺麗な犬を見たことはあるが、最近の大吉はそもそも硬いものを食べない。
このまま放置するとどうなるかというと、歯石や歯垢と歯茎の間に歯周ポケットができて、そこに細菌がたまって歯茎が炎症をおこし、さらに進行すると歯の下のあごの骨が溶け出すという。
全身麻酔で歯石除去をすることに
実際にそういう犬たちをたくさん診てきた獣医師さんが言うのであれば、今のうちになんとかしておかないと。9才の福助はそこまででもないが、せっかくだから一緒にやろうということになった。
歯石除去といってもそんなに簡単ではなく、全身麻酔が必要になる。できれば避けたいところだが、こればかりは仕方ない。大福を診てもらっているのは「
横浜山手犬猫医療センター」の上田院長で、以前ライターの仕事つながりでお会いしてからずっとお願いしている。信頼はしているが、全身麻酔となると万が一を考えてちょっとビビってしまう。
しかし事前に血液検査や施術中の点滴などしっかりモニタリングしながらやってくれるそうなのでお願いすることにした。
当日は、ちょっとした動揺を大福に悟られないよう普段通りの態度で接していたが、施術室に送り出すときはちょっとドキドキしていた。
予定では、どちらも1時間ずつくらいを予定していたが、歯の裏側など思いの外歯石が溜まっていたため時間がかかり、お昼から初めて大福共に終わったのが夕方16時頃だった。麻酔からうっすら覚めた大福を見て、まず「あぁぁぁ、よかった」と心の底から安堵した。まだフラフラしているし、目もうつろだが次第に意識が戻るだろう。
覚醒してから確認すると、大福共に歯が真っ白になっていた。よし。これからも歯磨きは続けて、なるべくこの状態をキープしたい。
彼らは自分が何をされたのかたぶん分かってないし、災難だったかもしれないが、許してくれ。君たちに少しでも長く健康でいてもらうのは、私の願いなのだ。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。