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犬がいる生活の災難(その3)「穴澤賢の犬のはなし」

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犬がいる生活の災難(その3)

1回目 2回目からのつづき
2018年3月16日の夜に自宅の階段から落ちて頭を打ってしまった。病院へ搬送されても私の意識は戻らず、翌朝9時から緊急手術。「頭蓋骨骨折」と「脳挫傷」に加え「外傷性くも膜下出血」、さらに「急性硬膜外血腫」と「急性硬膜下血腫」というかなり危険な状態で、後頭部の骨を削り、血の塊を出す大手術となる。

その間に、16日に会っていた人たちや、都内からの友人なども病院へ駆けつけて結果を待つ。開始から4時間ほど経過した13時すぎに手術が終了し、医師から出血場所をふさぎ、峠は越えたと説明があった。嫁は術後の私と対面したが、麻酔の影響もあるので意識はなく、しかも目は開いていて、白目までがむくんでいる状態でどこも見ていなかったという。

はじめて見る表情だったが、助かったことに少しだけ安堵した嫁はいったん帰宅する。大吉と福助が、昨夜から家で待っていたからだ。幸い、事情を聞いた嫁の両親が自宅に来てくれていて世話をしてくれて助かったとのことだった。

しかし、ここからまたショックなことがある。翌日、朝10時半から医師からの説明を受けたときだった。術後のCTでは、右後頭部の骨がなくなっていたが、昨日あった血の塊は消えていた。その席で嫁は「旦那さんはどんな職業をされていますか?」と聞かれたので、ライターとネットショップを運営していると答えた。

医師からは「おそらくライター業の復帰は難しい」と言われたそうだ。なぜなら今回の怪我で左脳の脳挫傷があるので文章を書くのが困難になる可能性が高い。さらに、幸い命は助かったが、ほかにも言語や運動に何らかの後遺症が残るかもしれないことなどを告げられた。

術後の私は集中治療室で人工呼吸器をつけた状態で相変わらず意識もほとんどなく、ときおり目を動かす程度。少しずつうなずいたりして意思表示をするようになるが、人工呼吸器のため会話もできない状態が続いていた。この頃の記憶も一切ないが、呼吸器が外れた19日の午前中に、私は突然子どものような口調で嫁にこんなことを聞いたという。

「ここどこ?」
「病院だよ」
「いつからいるの?」
「昨日からだよ」
「何日目?」
「2日目だよ」
「明日帰れる?」
「帰れないよ」
「なんでこうなったの?」
「階段から落ちたんだよ」
「いつ?」
「16日の夜だよ」
「夜?」
「そうだよ」
「学校に行く前に?」

これは嫁のメモに残っていたことなので、事実なのだろう。我ながら「おいおい、お前大丈夫か?」と思うレベルだ。何より、このときの脳の状態が分からない。意識は子ども時代に戻っているようだが、嫁が誰であるかは認識しているらしかった。であれば、記憶をつかさどる海馬は動いていたのかもしれないが、「現在の自分」はどこにいたのだろう。

しかも話すことの何もかもがあちこちへ飛んだという。口調が子どもだったかと思いきや、急に大人に戻ったり、大阪にいるつもりになったり、過去の仕事のことを話したり。コロコロ変わったと思いきや、いきなり「疲れた」といって寝たり。医学的な詳しいことは分からないが、おそらく脳がまともに機能していなかったのだろう。

手術直後はそんな状態だった。現実も把握できていなければ、何も正常に判断できていない。ただ翌日には、ぼそっと「大吉と福ちゃんは元気? あいつらが元気ならそれでいい」と言ったらしい。

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