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手術から入院生活4「穴澤賢の犬のはなし」

手術から入院生活4

1回目 2回目 3回目からのつづき
この前から「犬がいる生活の災難」としてけがの詳細を書いているが、階段から落ちたのは別に犬のせいではなく自分の責任なので、今更ながらタイトルを変えたいと思う。2018年3月16日の夜に病院へ搬送され、危険な状態という診断で翌朝に手術となった。後頭部の頭蓋骨を開き、血の塊を摘出するなどの大手術だったが、医師たちのおかげで一命はとりとめる。その後、私は4日間集中治療室にいた。
当初は人工呼吸器をつけて意識もほぼない状態だったが、19日ころから意思表示をするようになったという。20日からは人工呼吸器や点滴も外れ、翌21日には一般治療室へ移動して自由に行動できるようになる。頭は包帯でぐるぐる巻きだが、体は無傷だったため(転落で肋骨が数箇所折れていたことを本人も気づいていなかった)、車椅子でトイレに行ったり、言葉を話したりするようになっていく。

ただし、意識の状態は非常に怪しく、子どもっぽい口調だったり、言ってることが支離滅裂だったりしたらしい。集中治療室のときから親族や友人が見舞いに来てくれたが、顔は覚えているのだが名前が出てこなかったり、呂律が怪しかったりした。それだけではなく、次第に行動にも異常さが現れてくる。
最初は22日だった。夜に勝手に病室から出て、病院内を徘徊する。それが看護師さんに見つかり、動けないようベッドに手足を縛られる(危険なので)。しかし縛られているひもをほどこうとするため、両手にはミトンをはめられる。凶暴なわけではないが、とにかく病院から出たいらしく、嫁や見舞いに来た人にも「これをほどいて」とお願いして困らせていたそうだ。

常にそういう状態ではなく、普通に会話ができるときもあった。しかし話している相手のことは認識している(記憶にある)ようだが、相変わらず言っていることはあちこちに飛んで、戸惑わせていた。そして夜になると、口でどうにかミトンを取り、点滴の針も自分で抜きとり、血を垂らしながら逃げようとして、その度に見つかっている。

嫁は仕事を休んで毎日病院へ来てくれていたが、会うと「家に帰りたい」、「大吉と福ちゃんに会いたい」、「1時間だけでいいから帰らせて、そしたらまたここに戻るから」と頼んで困らせる。悪いけどそれはできないと言われると「なんでだよ!」と怒りまくったという。頭包帯ぐるぐるの奴が、滅茶苦茶である。3月24日の時点で、こんな状態だった。

ひどいときにはベッドに縛られたまま逃げようと暴れて、両腕はアザだらけになっていた。言い訳するわけではないが、このころの記憶が一切ない。そもそも私は基本的にそんなにわからず屋でも、粗暴な性格でもない(と思う)。
脳にダメージを受けると、こんなに人格は変わるのか。おそらく理性を司る大脳皮質がきちんと機能していなかったのではないだろうか。だから状況を考えず、自分の欲求ばかりを主張する。それが私の本質なのだろうか。何を考えていたかも思い出せないのが恐ろしい。
ただ、現実とは関係なく、私はある夢の中にずっといたことを覚えている。
(つづく)
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