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もうあんなに悲しい思いはしたくない【穴澤賢の犬のはなし】

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フリーランスのライターをやりつつ、気がつけば小さいながら会社を経営するようになったものの、自慢ではないが経営については無知すぎる。これではいかん、という自覚は一応あるので、たまに勉強になりそうなセミナーを見つけると参加することがある。今回はそんなセミナーで出会った、ある人の話だ。

偶然知り合った初老の男性と

先日、そんなセミナーの後の懇親会で、品のある白髪の男性と何がきっかけか忘れたが犬の話になった。「うちにはミックス犬が2頭いるんですよ」というと「うちはこのコ」とスマホを見せてくれた。そこにはグレーの可愛らしいトイプードルが写っていた。3才のオスらしい。

なんとなく「そのコがはじめての犬ですか?」と聞いてみた。そしたら2代目だという。実は昔、知人からもらったポメラニアンと長年暮らしていたが、そのコが年老いて亡くなったとき、あまりに悲しすぎたからもう犬は飼わないと決めていたらしい。

だからしばらく犬がいない暮らしだったが、3年前に別の知人の家で生まれた子犬を引き取ってくれないかと頼まれて、引き受けることになったという。迎える前はすごく悩んだが、犬がいる生活はやっぱりいいねと笑っていた。それを聞いて「すごくわかる」と思った。

不思議な意気投合と共通点

長年一緒に暮らした犬がいなくなったときのあの悲しさは、経験した人にしかわからない。いつかいなくなることは頭ではわかっているはずなのに、現実になると受け止められない。経験したことのない底のない悲しさに、ただただ戸惑う。実際にそう見えているわけではないが、色彩が消えた白黒写真の世界に生きているような気がする。それを人にわかってほしいとも思わないから、ひとり黙って涙の出ない泣く日々を過ごす。

さらにその人は「3カ月くらいしたら、仲のいい友人から元気出せよと言われるんだけどさ、そんなすぐ元気になれるわけなくてね」と言っていた。それも「えぇ、わかります」とうなずきまくり、自分も同じような経験があることを話し、すっかり意気投合してしまった。

そして2人とも、時の流れで悲しみの質は変わるし薄れるが、いつまでも先代犬のことは忘れないという意見は同じだった。なぜかまた犬と暮らしていることも。きっとこれを読んで「私もそう!」とうなずいている人がいるんだろうなぁ。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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