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犬のいない部屋【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

少し前から、嫁が大吉と福助をちょくちょく仕事場に連れて行くようになった。自宅から徒歩10分ほどのところに仕事部屋を借りているのだが、「一緒に行く?」というと喜ぶからという理由で(行っても昼寝してるだけらしいが)、出かける用事がない日など週に1度か2度は連れて行く。

大福は外出中?

家でも彼らは私の仕事部屋に居たり居なかったりするから、特に変わりはない。その日は、市役所に書類を取りに行く必要があったから私は朝から出かけていた。10時ころに帰宅すると、出迎えがないのはいつものことだが彼らの気配がない。きっと嫁が連れて行ったんだろうなと思い、仕事部屋でパソコンに向かっていた。
もし大吉と福助が3階の寝室で寝ていたとしても、宅配便が届いて玄関のチャイムが鳴ると「ワン!」と吠える声だけは聞こえたりするが(吠えるだけで降りては来ない)、それもないから、やはりいないらしい。家の中はシーンとしている。

いつもいる場所にいない違和感

お茶でも飲もうとキッチンの冷蔵庫を開けて振り返ったとき、部屋がガランとしているように思えた。不思議なもので、体重わずか15キロくらいしかない彼らがいないだけで、部屋が妙に広く感じるのだ。いつもいるはずの場所にいない、その言いようのない違和感。
それは富士丸がいなくなったときに強く感じた、あれだ。当時は30平米ない1DKで暮らしていたから広く感じるはずはないのに、常にガランとしていて、白黒写真のような無音の世界だった。実際は色はあるし音は聞こえるのに、なんとなくそう感じてしまう。それが喪失感というものなのだろうか。富士丸がいなくなった後、しばらくそういう時間が流れていたっけ。
そんなことをぼんやり思い出しながら、また仕事部屋でパソコンに向かっていた。嫁が連れて行った日は夕方の散歩も任せているから、行く必要がない。それはそれで楽なのだが、どうもリズムが狂う。
すると16時ころ、背後でスーッと扉が空いて大吉と福助が仕事部屋に入ってきた(散歩の催促)。思わず「おったんかい!」とびっくりしてしまったが、ずっと寝室で爆睡していたらしい。まさか気配まで消せるようになっているとは。君たち、「番犬」という言葉を知っているか?



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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