犬と暮らす
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お笑いタレント・やついいちろうさんと考える「ペットロス」
こぶしくん(オス・11才/9.0kg /パグ/食べること、走ることが大好き)
お笑いコンビ「エレキコミック」にて作・演出・ボケ担当。DJやついいちろうとして音楽業界にも精通し、自身の名前を冠したエンターテインメントフェスティバル「YATSUI FESTIVAL!」を主宰。ドラマを中心に俳優としても活躍。生粋の愛犬家で、昨年6月には愛犬のことをつづった著書『うちの犬がおじいちゃんになっちゃった 愛犬こぶし日記』(カンゼン)を上梓。
「こぶしが 10 才になったころ、あちこちに急に不調が出始めた。〝あ、おじいちゃんなんだ〞って思ったんですよね」
5才くらいから顔が白くなってきてはいましたが、こぶしは元気いっぱいで病気知らず。あまり年を感じることってなかったんです。それが一昨年の年末、10才目前のころに後ろ足を引きずって歩くようになったんです。震えもあって、「おや、おかしいぞ」って。それで思い返してみると、若いころはよく走り、跳んでもいたこぶしですが、以前ほどできなくなっていたことにも思い当たりました。ソファに跳び乗ろうとしてそのままぶつかるようなこともあったし、巻いていたしっぽも下がったまま。年をとるという当たり前のことを、実感しました。
そうなんです。結果的に、足の震えは椎間板ヘルニアが原因でした。レントゲンではわからなくて、MRIを撮ってもらってわかりました。手術はリスクが高いからと、鍼灸などのケアで様子を見ていくことにしましたが、ムキムキだった後ろ足の筋肉も落ち、体も細くなっていきました。
またあるときから頻尿になってきて、おもらししちゃうようなこともあったんです。年のせいかと思ってしまっていたのですが、突然すごく吠えて、おなかを触るとカチカチ。ただ事じゃないと思って動物病院へ連れていくと、尿道結石でした。頻尿も、結石によって尿の排出がしづらくなっていたためだったんです。それで結局緊急手術をし、ことなきを得ましたが、今度は膿皮症になって、それがなかなか治らない。今は3日に1度薬用シャンプーをしていますが、治りが芳しくないのは老いて免疫が落ちているのもありそうです。とはいえ、いったんいろんなことが落ち着いて、こぶしは今元気なんです。もちろん筋力は弱って腰が落ちたりもしますけど、散歩も大好きだし、よく食べます。
僕、のんきなんですよ(笑)。状況がよくなったら大変だったことも忘れちゃって、正直、不安はないんです。愛犬を亡くしてペットロスになり、突然泣きだしたり、食事もとれないようでやせてしまったりした友達がいました。それを目の当たりにして、自分もペットロスになるのだろうかと不安がよぎることはあります。でも、そのときってわからないじゃないですか。どう最期を迎えるかって、どんなに準備しても想像しても、わからない。わからないことに思い詰めるのは、自分らしくないなとも思っています。
愛というか、こぶしを好きだっていう気持ちはどんどん強まっていて、今いちばんかわいい。老いを認識して、以前よりもっと、こぶしといっしょにいたいと思うようになりました。こうしていっしょに座っているだけでもいいんです。温かくて、それだけで幸せですよね。あとは、犬ってそんなに複雑じゃないじゃないですか。食べたい、散歩に行きたい、トイレしたい、くっつきたい。そういうことをちゃんと満たして、穏やかな気持ちでいさせてあげたいですね。
写真/今井 卓
文/川本央子
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