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福助の便意の謎【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

腰越にいるときは、毎朝、江ノ島を望む片瀬東浜海岸を散歩している。晴れた日は海が青く見えるのだが、彼らは景色なんてどうでもいい。砂浜は、ただ用を足す場所としか認識してないようだ。じゃあ砂浜に行く意味はないんじゃない? と思うかもしれないが、彼らはなぜかアスファルトの上ではウンチをしない。どういう基準かさっぱり分からないが、大吉と福助どちらも、土か砂の上がいいらしい。

外でしかウンチをしない悩み

とはいっても、今どきの住宅街の道はほぼすべて舗装されているので、土の上を歩ける場所がほとんどない。公園もないことはないのだが、坂を登った上の方にあるし少し遠いから、結局は家から近い海の方へ行っている。
徒歩5分ほどの海岸に到着すると、ロングリードに付け替える。すると彼らは各自、用を足す場所を探し始める。これまでも書いたことがあるが、大吉は比較的スムーズに場所の選定を済ませる。問題は福助である。毎日なかなかお気に召すところが見つからない。クンクンとニオイをかいで、くるくる回ったかと思えば「なんか違う」となり、また歩き出す。それをひたすら繰り返すのだ。
たまに立ち止まり、こっちを振り向き「うーん、どうしよう?」という顔をする。内心「知るか! 早くしろよ!」と思うのだが、そこで変にリアクションするとウンチモードが解除されてしまうので、そういうときは目を合わせず、心を無にして、ひたすら後を付いて歩くようにしている。えらいことに、すでに用を足した大吉はちゃんと付き合ってくれる。

散歩はウンチをするため?

ひとつ断っておきたいのだが、彼らは散歩を楽しんでいるわけではないということだ。よく犬は、あちこちのニオイをクンクンかぎながら歩くことそのものを楽しんだりするものだが、大吉と福助については、そんなそぶりはない。ただ、本日の場所を探すためだけに砂浜を歩いている。その証拠に、その日のお気に召すウンチポイントが見つかり無事用を足すと「さ、帰ろ」となる。
不思議なのは「本日の場所」が一定ではなく、日々転々とすることだ。公園とかならいざ知らず砂浜なんてどこでも一緒だろ、と思うのだが、その日その日で納得できる場所が変わるらしい。風向きや気温、湿度、気圧とかが影響しているんだろうか。
しかしよく考えるとおかしいと思うことがある。実は福助は昔から雨が嫌いだったが、最近どんどんひどくなり、玄関でレインコートを着せると「えぇ〜、雨なの? 行きたくないなぁ」という顔をするようになった。
それでもウンチはしてもらいたいし(外でしかしないから!)、大吉もいるので散歩には連れ出すのだが、そういう日の福助のウンチポジションの選定はものすごく早い。大吉より早いくらいだ。砂浜に着くやいなやウンチングスタイルになり、終わると「さ、帰ろ帰ろ!」と家へ向かおうとする。いやいや、大吉はまだだから。
そういう姿を見ていると、日々のウンチ場所の選定にやたら時間がかかるのは何なのだと思う。晴れたらなかなか出ず、雨なら即出る。そこまで天候に左右されるか? 君の便意はどうなっているんだよ、と思う。たぶん気温も湿度も気圧も関係ない。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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