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それぞれの雪遊びと私の変化【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

先々週、八ヶ岳の山の家で過ごしているときに2日連続で雪が降った。「丸山の森」あたりは雪国ではないので、なかなか珍しいことだ。10センチ未満の積雪だったが、大福にとっては今年の初雪になる。朝の散歩の後、少しドッグランで遊んで家に入ったが、しばらくしたら「外へ行こうよ!」と猛アピールしてくる。

2頭の遊び方が違う

平日で仕事はあったが、せっかく雪が積もったんだしと、圧に負けて少し雪遊びに付き合うことにした。家の前は苦労して自力で作ったプライベートドッグランがあるんだから勝手に遊んでくれればいいのに、大吉も福助も「見る係」がいないとテンションが上がらないらしい。だから仕方なく、厚手のコートに長靴を履いて外に出る。
すると彼らは「ひゃっほー!」とばかりに駆け回る。私はそんな姿を、ただ見ている。そして改めて思う。多くの犬はなぜか雪を見ると大喜びするが、遊び方がそれぞれ違うと。
福助はやたら転がる。コケるわけではなく、意図的に転がっているのだ。ぐるんとでんぐり返しするように仰向けになると、そのままズルズルと滑ったりする。起き上がると、また同じことをする。何が楽しいのか分からないが、本人は楽しくて仕方ないようだ。
いっぽうの大吉は、一切転ばない。ふたりでバトルのようになっても、福助がすぐ転ぶのに対して、大吉が転ぶのをほとんど見たことがない。また、福助は雪に鼻先からズボッと刺さる通称「鼻ズボ」をよくやるが、大吉はまったくやらない。走り回るくらいだ。

犬を飼い始めて変わったこと

そういえば、先代犬の富士丸も独特だった。雪玉を作って投げると、口でバクッ!と砕くのが好きだった。だから仕方なく、雪玉を「投げる係」になり付き合ったりしていた。
そんな経験から犬はそういう遊びが好きなんだと思い、大吉が初めて雪を見たときに同じことをしてみたが、そのまま顔に当たって「何でそんなことすんの?」という非難の目を向けられたことがある。なので、犬にはそれぞれ好みの雪遊びがあるようだ。
いずれにしても、私が知っている限り、犬は雪が大好きらしい。特に富士丸の雪への好き度はすごかった。ハスキーの血が半分入っているから当然かもしれないが、超暑がりだった彼は、雪を見ると狂喜乱舞したものだ。だからしょうがなく、冬に雪が積もっているようなところへ旅行するようになったのだった。
私は昔から雪にはまったく興味がなかった。20代のころ『私をスキーに連れてって』という映画がヒットしてからスキーブームになっていた時代、私は旅行会社に勤めていてスキーツアーの現地駐在員として冬の4カ月間、野沢温泉に滞在していたことがあるが(しかも2シーズン)、スキーはしなかった。現地スタッフたちが休日の度に喜んでスキーに行くのを傍目に「寒いから俺は行かない」と石油ストーブの前にいる超インドア派だった。
そんなやつが、富士丸が喜ぶからと雪山へ行くようになり、今では「雪、積もらないかなぁ」とちょっと期待したりする。そして雪が積もれば大福の雪遊びに付き合っている。そろそろ家の中に入ろうよと思いつつ。でも無邪気に雪遊びしている彼らを見ていると、愛おしくてたまらない。

※次回の更新は2023年1月9日の予定です



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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