犬にも喜怒哀楽があり、その豊かな感情を表情やしぐさ、鳴き声などを通じて表しています。犬の感情表現を知って愛犬の気持ちを正しく読み取れれば、困りごとの解決に役立ち、お互いの関係性も良好に。
今回は喜怒哀楽の「喜」について、犬の行動学にくわしい獣医師の菊池亜都子先生に教えていただきました。
喜びや安心感といった前向きな感情
たとえばゴハンの時間や飼い主さんにほめてもらえたときなど、希望がかなった場面や好きなものに会えたときに「喜」の感情がわき上がります。ここには、うれしさや安心感、満足感といった感情も含まれ、どれも似たしぐさや表情を見せます。
【表情】目は輝き、ほおはゆるみ、顔全体に緊張感がない
目はキラキラとして見え、顔全体に緊張感はありません。安心、安全だとわかっている場面では、目を細め、耳を倒していたり、耳と耳の間があいていたりすることも。口が大きくゆるんで、舌を出しているケースもあります。
【声】気持ちが高ぶって、甘えるように鳴くことも
感情が高まり、クンクンと鳴くことが。また、もっとおやつが欲しい、もっとなでてほしいなど、おねだりの気持ちから鳴く犬も。おねだりの場合、そのまま要求をのんでいると鳴きグセがつくので注意して。
【しっぽ】しっぽを振る=喜びではなく、まったく振らないことも
その犬や状況によって差があり、喜ぶときにしっぽを振る犬と振らない犬がいます。振る場合は、しっぽに力みはなく柔軟性がある状態で、ゆるやかに上げるか、もしくは水平ぎみにして、しなやかに振ることが多いです。
【体の様子・しぐさ】全身の力が抜けて寝転がったり、うれしさのあまり回ることも
危険を感じなくていい状況のときは、犬によっては全身の力が抜けて横になる場合が。高ぶる気持ちから、オシッコをもらしたり(うれション)、その場で1、2回だけ回ることで、はやる気持ちを静めようとしたりする犬もいます。
喜んで近寄ってきておなかを見せたとしても、なでてほしくない犬がいます
目を輝かせながら相手に近づき、自らあおむけになったとしても、必ずしも「なでて」と思っているわけではありません。喜んでいて、かつ相手に心は開いているのでおなかは見せますが、「なでられるのは嫌」という犬も。そんな犬には無理になでたりせず、「イイコ」と笑顔で声をかければ十分です。
菊池先生によると、愛犬が「喜」のときは、愛犬の好みを把握して可能な限りもっと喜ばせると◎。「喜」を感じる場面が多いほど、犬はその場に慣れてストレスを感じにくくなるのだそう。ぜひ、参考にしてみてください。
※犬の感情は刻一刻と変化します。今回ご紹介した感情やその表現方法はあくまで一例です。
お話を伺った先生/獣医師・菊池亜都子先生
参考/「いぬのきもち」2023年1月号『犬の喜怒哀楽ずかん』
写真/尾﨑たまき、佐藤正之、平林美紀
文/いぬのきもち編集室