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「犬の祖先はオオカミだから」を疑え|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.1

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「いぬのきもちWEB MAGAZINE」より新たな連載がスタート。家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。西川氏は、自身のしつけ教室はもちろん、「いぬのきもち」をはじめさまざまなメディアでその科学的な理論に基づくトレーニング法を提唱、多くの愛犬家に支持されており、環境省の主催した講座や大学などで過去に講師も務めています。実は誤解の多い、犬にまつわる常識・非常識を楽しく解説してもらう連載です。

さて、今回は。「犬の祖先はオオカミだから群れていたい動物」「犬はオオカミ同様リーダーが必要」……犬についてそんなふうな表現を聞いたことはないでしょうか? 実は科学の進化に伴い、その「常識」は古く間違ったものになりつつあるのです。


「一度拡散された情報は訂正されにくい」
メディア研究でよく語られることです。
1990年代に拡散された情報のひとつに、「犬はオオカミと同じ」があります。私もかつて、率先して拡散していました(申し訳ない・・・)。実は「犬はオオカミと同じ」という情報、拡散されていた時点では仮説に過ぎませんでした。犬とオオカミの科学的な真実が明らかにされていったのは、2000年に入ってからなのです。

Can! Do! Pet Dog School提供

↑柴(左)と、ベルジアン・シェパード・ドッグ・タービュレン(右)。見た目と違い、遺伝子レベルでは柴のほうがオオカミに近い

犬の祖先はオオカミ、これは事実

「DNAに刻み込まれている人間の全遺伝子情報を解析しよう」
90年代初頭からスタートしたヒトゲノム計画では、並行して多くの生物のゲノム解析も行っていました。そのゲノム解析の結果として、2000年前後に「犬の祖先はオオカミ」と結論づけられたのです。
遺伝子に関する研究はその後急速に進化し、それまでわからなかった遺伝子の役割をはじめ、さらに微細なこともわかっていきます。
「でんぷん消化に関係する遺伝子変異があり、犬は肉食ではなく雑食化している」「人懐っこさに関係する遺伝子に、オオカミと大きな違いが見られる」など、ほかにも犬とオオカミの遺伝子の相違・変異は多々報告されています。
遺伝子の研究とは別に2000年に入ってからは、次のような事実も明らかになっていきました。

家畜化が変えるもの

ロシアが50年代から行って来た実験の報告です。野生のギンギツネを捕まえて、繁殖して増やす。野生のキツネは警戒心が強く、人間を避けるか攻撃するかどちらかなのですが、集団のなかで相対的に警戒心が弱い個体達をピックアップし子どもを産ませる。その子どもたちも当然警戒心が強いのですが、そのなかで相対的に警戒心の弱い個体たち同士で子どもを産ませる。これを40年以上にわたって繰り返したのです。
実験でわかったことは、20世代くらい経ると毛色が変わってくる、30世代越えると耳や尻尾などが小ぶりになっていく、そして40世代目には犬のようにしっぽを振って人間に寄ってくるようになる、ということです。
40世代ほど人間が選別的な交配を続けると、本来持っていたその動物の行動的な特徴が大きく変化する。
犬はオオカミから枝分かれして、1万年以上経っています。40世代どころか、その何十倍、いやそれ以上の世代にわたって人間が意図的な交配を行ってきています。オオカミの行動的な特徴がもはや犬と、同じわけがないのです。

関係が良好な犬は飼い主をよく見る

さらに行動研究では2000年代末以降、こんな2者の違いの報告もなされています。
犬は飼育者と視線を合わせようとするが、オオカミにはそうした行動が見られないと。
まだまだ犬とオオカミとの違いの例は挙げられますが、要は「犬の祖先はオオカミ」だけど「犬はオオカミとイコール(同じ)ではない」ということ。
そうそう「犬はオオカミと同じ」以上に「一度拡散されて訂正されていない情報」があります。
「ニホンザルの群れにはボスがいる」という情報。
はてさて、これは真実か?
こちらはまた機会を改めて・・・。

Can! Do! Pet Dog School提供

↑アイコンタクトをよく取る、オオカミには見られない行動

文/西川文二

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『イヌのホンネ』(小学館新書)、『うまくいくイヌのしつけの科学』(サイエンス・アイ新書)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)など。愛犬はダップくん(14才)、鉄三郎くん(10才)ともにオス/ミックス。

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