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「犬の祖先はオオカミだから」を疑え|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.1
さて、今回は。「犬の祖先はオオカミだから群れていたい動物」「犬はオオカミ同様リーダーが必要」……犬についてそんなふうな表現を聞いたことはないでしょうか? 実は科学の進化に伴い、その「常識」は古く間違ったものになりつつあるのです。
メディア研究でよく語られることです。
1990年代に拡散された情報のひとつに、「犬はオオカミと同じ」があります。私もかつて、率先して拡散していました(申し訳ない・・・)。実は「犬はオオカミと同じ」という情報、拡散されていた時点では仮説に過ぎませんでした。犬とオオカミの科学的な真実が明らかにされていったのは、2000年に入ってからなのです。
犬の祖先はオオカミ、これは事実
90年代初頭からスタートしたヒトゲノム計画では、並行して多くの生物のゲノム解析も行っていました。そのゲノム解析の結果として、2000年前後に「犬の祖先はオオカミ」と結論づけられたのです。
遺伝子に関する研究はその後急速に進化し、それまでわからなかった遺伝子の役割をはじめ、さらに微細なこともわかっていきます。
「でんぷん消化に関係する遺伝子変異があり、犬は肉食ではなく雑食化している」「人懐っこさに関係する遺伝子に、オオカミと大きな違いが見られる」など、ほかにも犬とオオカミの遺伝子の相違・変異は多々報告されています。
遺伝子の研究とは別に2000年に入ってからは、次のような事実も明らかになっていきました。
家畜化が変えるもの
実験でわかったことは、20世代くらい経ると毛色が変わってくる、30世代越えると耳や尻尾などが小ぶりになっていく、そして40世代目には犬のようにしっぽを振って人間に寄ってくるようになる、ということです。
40世代ほど人間が選別的な交配を続けると、本来持っていたその動物の行動的な特徴が大きく変化する。
犬はオオカミから枝分かれして、1万年以上経っています。40世代どころか、その何十倍、いやそれ以上の世代にわたって人間が意図的な交配を行ってきています。オオカミの行動的な特徴がもはや犬と、同じわけがないのです。
関係が良好な犬は飼い主をよく見る
犬は飼育者と視線を合わせようとするが、オオカミにはそうした行動が見られないと。
まだまだ犬とオオカミとの違いの例は挙げられますが、要は「犬の祖先はオオカミ」だけど「犬はオオカミとイコール(同じ)ではない」ということ。
そうそう「犬はオオカミと同じ」以上に「一度拡散されて訂正されていない情報」があります。
「ニホンザルの群れにはボスがいる」という情報。
はてさて、これは真実か?
こちらはまた機会を改めて・・・。
西川文二氏 プロフィール
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