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「飼い主は犬のリーダーであれ」は本当か|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.2

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」より新たにスタートした連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回のお話は、飼い主と犬の関係性について。全然いうことをきいてくれない愛犬に、飼い主さんのなかには、「なめられているのかな」「愛犬にリーダーと思われてないのかな」などと感じる方もいるようです。でも、実はリーダーになる必要はないって知っていますか?



「ニホンザルの群れにはボスがいない、これ知ってる人、手をあげて」
これ私が講演会などで、よくする質問のひとつ。質問の意図は、真実と思っている情報が、実はとっくに刷新されているのに、その刷新されている情報を知らない人が多い。「犬ってこう」という、自分が疑いもなく信じている内容も同じかも、と考えてもらうためです。

「ニホンザルの群れにはボスはいる」。
この伝説は1950年代に高崎山の餌付けされたサルの研究に基づくものです。しかし、のちの野生のサルの観察から「ニホンザルの群れにボス的な存在はない」ということがわかったのです。
1頭のニホンザル
getty
↑いい場所を陣取っていても、群れを統率している存在ではない

オオカミにも似たような話が

オオカミの研究も、餌付けされたオオカミの観察からかつてその生態が結論づけていたのですが、あるオオカミの研究者は自ら「われわれの研究は、例えるのなら収容所に収容されている人間を観察して、人間とはこうだと決めつけているようなもの」と語っていました。
その後2000年に入って自然界におけるオオカミの研究で明らかにされたのは、オオカミの群れは、父親、母親、そしてその子どもたちで構成されているのが基本、という事実です。
不特定多数のオオカミが集まり群れを作る。そのなかで強い個体が、ボスとなり群れのメンバーを牛耳る。かつて信じられていたイメージ(90年代、私はそう教わったのですけどね)ではなく、群れのメンバーはリーダーと考えられていたオオカミに、お乳をもらい生み育てられた存在だった、ということなのです。

飼い主はリーダーになるべき?

「犬はリーダーに従うから、飼い主はリーダーになる必要がある」。
この考えも90年代に広まった、そもそもは「犬はオオカミと同じ」「オオカミはリーダーに従う」ゆえに、「犬はリーダーに従う」という、三段論法(A=B、B=C、ゆえにC=A)的な考え方に基づいています。
しかし、オオカミの群れにいるのはリーダーではなく親で、前回のコラムで記したように犬はオオカミと同じというわけでもない。すなわち、A≠B、B≠C、なわけで、もはや3段論法の体もなし得ていない。
犬が飼い主の言うことを聞かないのは、飼い主のことをリーダーではない、と思っているからではありません。
好ましい行動や合図をちゃんと教えていない。あるいは、指示に従ってもいいことが起きていないか、指示に従わなくともそれで済んでしまっているか、それだけです。

目指すべきはやさしい保護者のような存在

家族として迎え入れた犬は、一番末っ子のようなものです。人間であれば、その子の将来を思って、好ましい行動をいろいろと親は教えるでしょう。もちろん、末っ子とはいっても実の子であるわけもなく、飼い主は犬の本当の親になることはできません。
リーダーになろうなどと思わずに、親代わりという気持ちになって、その子が将来、快適に、安全に、ストレスなく過ごせるための、好ましい行動をやさしく丁寧に教えればいい。そして、それが犬のしつけということになるのです。
雑誌「いぬのきもち」より
↑快適で安全に日常生活を過ごすためにも、好ましい行動を教えることが重要
文/西川文二

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『イヌのホンネ』(小学館新書)、『うまくいくイヌのしつけの科学』(サイエンス・アイ新書)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)など。愛犬はダップくん(14才)、鉄三郎くん(10才)ともにオス/ミックス。
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