己の目標を振り返ってみたら
大吉と福助は八ヶ岳が大好きで、車で向っているときから目が輝いている(夜なのに)。そしてなぜか、どこへ行こうとしているのかも、わかっているっぽい。移動しているだけなんだから寝てればいいのに、ニコニコしながらずっと起きているのだ。ふだんは夜9時頃には先に寝室に行ったりするくせに。
現地に着くのはだいたい0時頃になり、私は寝る前にビールを飲んだりするのだが、その横で大吉も福助もしばらく起きている。家でそんな時間に彼らが起きているなんて、まずあり得ない。
それでも、翌朝は元気いっぱいだ。山の家は標高1500メートルにあるので、朝夕は夏でもかなり涼しい。今年の夏は異常に暑いが、山の家はエアコンがなくても平気だ。そんな気候は犬にとっては極楽なのだろう。朝の散歩に行ってもウキウキしている感じが伝わってくる。
私には草刈り作業があったりするんだが、大福たちはきれいになったドッグランで遊び回っている。木陰のせいで晴れた日でも涼しいし、楽しそうで何よりだ。できれば毎週末ごとに山の家に行きたいところだが、仕事や用事があるので、そうもいかない。しかしできれば月に2回、最低でも月に1度は行くようにしている。
ところで、少し前から「いぬのきもちWEB MAGAZINE」では、過去にアップされた記事を紹介する企画をやっている。その中にこの連載もたまに入っており、2016年7月に掲載された「
わが人生の目標とは?」というタイトルが目について、自分で書いたはずなのに「なんだっけ?」となって読んでみた。
そしたら、人生の目標として「たまには山の麓で犬たちと暮らしたい(ドッグラン付き)」と書いてありちょっと驚いた。すっかり忘れていた。その時点で、何ひとつ計画は立てていなかったはずなのに、それから約2年で、まさか現実になっているとは。
というか、「しっかり目標を立てないと」とか宣言しておきながら、目標を立てたこと自体を忘れて、計画すら立てず相変わらず「なりゆき」のみでここまで来たことになる。それはどうなんだろうと思うが、結果的に大吉と福助は喜んでいるので、まぁよしとしよう。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。
株式会社デロリアンズ代表。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。
ブログ「Another Days」
大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雪と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。