「愛おしすぎて胸がいたい」「なぜか涙が出てきた」ーー犬を飼っている人だけでなく、多くの人に大切なことを気づかせてくれる犬漫画が、今話題になっているのをご存知でしょうか?
イラストレーター・じゅんさんによる『こんにちは、いぬです』が話題沸騰中
その漫画を手がけているのは、現在24歳のイラストレーター・じゅんさん。犬のことが大好きだというじゅんさんが描く犬のイラストからは、ぎゅっと抱きしめたくなるような愛おしさと切なさが溢れています。
もともとSNSやLINEスタンプなどでも多くのファンから支持されていたじゅんさんですが、今年の9月にTwitterに投稿されたじゅんさんによる
『犬の十戒』の漫画をきっかけに、さらに注目されるようになります。
ノルウェーのブリーダーが犬の買い手に渡していた「犬からご主人への11のお願い」がもとになっているとされる『犬の十戒』。作者不明であるにもかかわらず、世界に広く伝わる有名な英文の詩です。
その原文をじゅんさんが読んで感じとったことをもとに、『犬の十戒』を漫画で描いたことで、「読むだけで泣ける」「心に沁みます」と、その内容に大きな反響が寄せられました。
そして今年の10月に、書籍『こんにちは、いぬです』(幻冬舎)が発売されると、すぐに重版が決定するほどの話題の作品に。
犬漫画を描いているのだから、きっと犬を飼っているのだろうと思いきや、ご本人はこれまで犬を飼ったことがないのだそうです。それにもかかわらず、じゅんさんが描くストーリーは、犬を飼う人たちの心にも刺さりまくるという不思議な魅力に溢れています。
『こんにちは、いぬです』はなぜ人を惹き付けるのかーーいぬのきもちWEB MAGAZINEでは、じゅんさんが漫画を通して伝えたい思いを聞いてみました。
『こんにちは、いぬです』はなぜ人を惹き付けるのか? 作者のじゅんさんが漫画を通して伝えたい思いとは
ーー『こんにちは、いぬです』シリーズは、じゅんさんが考える犬の気持ちを、ファンタジーとして犬たちが伝える、というコンセプトだと思います。その発想はどこから生まれたのですか? 飼い主目線で語られる作品もあるなかで、犬を主体に持ってきた理由について教えてください。
じゅんさん:
「以前よりいぬが好きで、でも今までいぬと暮らしたことがなく、写真や動画で見ている毎日でした。こんなに日々を全力で楽しそうにご主人と暮らすいぬたちは、どんなことを考えて過ごしているのか。それを知りたいと思ったのが始まりかもしれません」
ーー犬を実際に飼っている方や、犬以外の猫好きさんたちからも反響があると伺いましたが、そのことについてどう思われますか?
じゅんさん:
「とても嬉しいです! 自分自身この作品を描いていて、いぬだけじゃなく他の動物たちとの暮らしのなかでも、漫画のなかに重ねていただけるものがあったら嬉しいなと思っておりました。また、育児にも通ずるものがあるというコメントもいただきました…!」
「こんにちは、いぬです」キャラクター誕生秘話
ーー登場する犬種の多さや性格のバリエーションが、漫画を楽しめる要因のひとつでもあると感じます。「この犬種をこんなキャラクターで描こう」というのは、どうやって決めたのですか?
じゅんさん:
「登場する犬種とそのキャラクターについては、『この犬種だからこんな性格にしよう』というのも少しはありますが、『こういうご主人とこんな生活をしているからこういうキャラクターになる』というように考えています。
あとは、個人的に好きな犬種を出しているのもあります…!」
ーー犬に限らず、登場する人間(飼い主・家族)のバリエーションも豊かで、様々なライフステージの人々と犬との対比が、多くのドラマを生み出していると感じました。登場する人物たちについては、どのようなことを意識して設定したのですか?
じゅんさん:
「ご主人たちは、本当に周りにいそうな人物を考えました。実家を出ていてたまに帰るとすごくいぬが喜んでくれるとか、家族のなかで自分だけがいぬに吠えられるとか、そんな飼い主あるあるを組み込みつつ考えていきました。
私が漫画のなかで、いぬたちをこんなに元気に、やさしく、のびのびと描けているということは、いっしょに暮らすご主人たちは、ものすごく愛のある温かな人たちなのだと思います」
じゅんさんが、いぬのイラストを描き始めたきっかけは?
ーーじゅんさんは現在24歳でイラストレーターとして活躍されていますが、そもそも犬のイラストを描くようになったきっかけはなんだったのですか?
じゅんさん:
「きっかけは、6、7年くらい前SNSで拡散されてきた柴犬がお散歩からお家に帰るのを拒否している動画を見たときです。子どもの頃は亀を飼っていたのですが、いぬとあまり関わりがなかったので、見たときはその可愛さに衝撃を受けて。それから、いぬのお写真や動画を見るようになって、気づいたら描いていました」
ーー犬を描く際に、どんなことに気を遣って描かれていますか?
じゅんさん:
「イラストを描く際に気をつけている点は、たくさんの愛情を受けて暮らしているような幸せないぬを描くようにしています」
ーーもし今後、じゅんさんが実際に犬を飼うことになったとき、どのようなことを大切にして愛犬と暮らしたいですか?
じゅんさん:
「もし暮らしたら…大切にしたいことが多すぎて書ききれませんが、時に優しく、時に厳しく…愛情を注ぎに注ぎまくりたいと思っています!」
「(いぬは)いまがすべて」を伝えたいと思った理由
ーー以前Twitterで、「(いぬは)いまがすべて」という投稿をされていましたよね。じゅんさんの漫画では、今その瞬間の犬の気持ちが描かれていて、考えさせられることが多かったです。「犬は今がすべて」だと漫画を通して伝えたいと思ったのには、どのような思いからなのでしょうか?
じゅんさん:
「いぬは、未来についてあれこれ考える(理解する)ことがないそうです。ただただ『今』という瞬間を生きているといいます。寝たいから寝る。走りたいから走る。人間のように、未来に対する不安や願望もありません。
そんないぬたちの生き方はすごく素敵で美しいと思い描きました。いぬたちから学ぶことは本当にたくさんあると思います」
ーー飼い主さんは犬との過去を振り返ったり、これから起こりうる未来のこと(病気になってしまうことや、お別れがくることなど)を考えて、ときには思い悩むこともあります。「今、目の前の愛犬だけを見て接してあげる」ということを忘れてしまう瞬間もあるのではないかと思います。そんななかで、『こんにちは、いぬです』は私たちが普段見落としていた小さな大切なことがいくつもあると気づかされます。
「いぬたちがこんなことを思っていたとしたら…」 じゅんさんが漫画を通して伝えたいこと
ーー飼い主さんの事情で引っ越しをしたり、毎日留守番をして飼い主さんの帰宅を待っていたり…犬を飼っていたり、日頃から触れ合う機会が多い人ほど、ハッとさせられるシーンが多いように感じます。飼い主さんの日常で具体性のあるシーンを描こうと思ったのは、どのような思いからですか?
じゅんさん:
「本当は、いぬたちは物事を漫画のように思っていないかもしれないけれど、こう思っていたとしたら…自分をこう思ってくれていたとしたら…自分の家族としてもっともっと向き合ってもらえるのではないか、という思いは強くあります」
ーーしばいぬさんとご主人、シーズーさんとご主人のエピソードなど、どれも読み終えたあとも強く印象に残っているシーンが多かったです。登場する犬種たちのストーリーには、具体的なモデルになったコもいますか?
じゅんさん:
「シーズーさんとご主人のお話は、自分もかなり思い入れが強いというか、たくさん考えて描いている漫画のなかの1つです。モデルですが、具体的にはいません。
自分のなかでは、こんないぬたちご主人たちが本当に世界のどこかに存在していて、幸せに暮らしていると思っているので、『このコならこんなストーリーになりそう!』と考えています」
ーーじゅんさんは犬を飼われた経験がないとうかがいましたが、漫画を見ていても犬への理解の深さや、犬への愛情を感じられます。犬への思い入れが強い理由はなんでしょうか?
じゅんさん:
「まっすぐに感情を伝えたり、寄り添ったり、いろんな表情を見せてくれるいぬは『愛』そのものだと思ったからです。いぬのことをもっともっと知りたいです」
ーー最後になりますが、じゅんさんは読み手の方に、漫画を通してどのようなことを感じてほしいと思っていますか?
じゅんさん:
「いぬに限らず大切な存在に対して、気持ちを穏やかに、優しく、温かに、接していきたいと思っていただけたら嬉しいです。
犬と暮らしている方へ。いぬはいつでも、あなたのことを想っています」
犬をもっともっと知りたい…その純粋な思いによって描かれた作品が、読む人の心を動かしているのだ感じました。まだ読んでいないという方も、じゅんさんのやさしく、あたたかい世界観に触れてみてはいかがでしょうか。