ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、殺処分ゼロと動物福祉の向上を目指し、犬たちが快適に過ごせるシェルターを群馬県前橋市に設立した犬猫生活福祉財団。その活動について紹介します。
犬の幸せを客観的に考えてシェルターを設立し、動物福祉を広めることを目指す財団
犬猫生活福祉財団 事務局長の福田敬土さん。2021年の財団立ち上げ時からのスタッフで、シェルターの運営を支えている。自身も大の愛犬家で、愛玩動物飼養管理士の資格も取得。持続可能な保護活動を目指して日々尽力
群馬県前橋市郊外の緑豊かな環境に、保護された犬猫たちがのびのびと暮らす「犬猫タウン前橋」と名づけられたシェルターがあります。このシェルターは、2022年1月に一般財団法人犬猫生活福祉財団(以下財団)が古民家を改装して開所しました。専用の動物クリニックが併設され、おもに猫の避妊・去勢手術ができる移動式の専用車も完備しています。動物たちを保護したあとは、医療面の処置を万全にして一般家庭に譲渡する仕組みが整っているのです。
財団が開所したシェルター「犬猫タウン前橋」。入り口には保護動物専用のクリニックがあり、獣医師が常勤しています
緑に囲まれた小道を進むと、古民家を改装したシェルターがあり、そこで犬たちは快適に暮らしています
当財団は、「収容ゼロ・殺処分ゼロ・不適切飼育環境ゼロ」という3つのゼロを掲げて2021年9月に設立されました。代表の佐藤淳さんが設立当初から目指しているのは、「動物愛護活動」をさらに前進させた「動物福祉」の活動を広めること。動物福祉とは、国際的に定められた動物のための「5つの自由」が柱になっています。基本理念は、「飢え・渇きからの自由」「痛みや病気からの自由」「不快な環境からの自由」「動物本来の行動がとれる自由」「恐怖・抑圧からの自由」です。
「不幸な環境からレスキューされた犬たちには、5つの自由が保証されたシェルターで、できる限りストレスのない生活を送ってもらいたい、そんな思いから、犬猫タウンの建設にあたりました。設計については、当財団に所属する獣医師や動物行動学の専門家の協力を仰ぎ、客観的に見てどうしたら犬たちが快適に過ごせるかを考えました」と福田さんは話します。
犬猫タウン前橋には、出張で猫の避妊・去勢手術ができる移動式手術車も導入
シェルターを開所するには地元の理解や協力を得ることが重要だったとのこと。「シェルターの場所を前橋市に決めたのは、財団の本部がある東京からあまり遠くなく、また民間のシェルターが少ない地域という理由からでした。場所が決まり、すぐに市の方に連絡してみたところ、話が順調に進み、官民連携で動物の福祉活動が行えることになったんです」。
シェルターに来て1年になるコッペくん(推定8才)。市内を放浪していたところを保護されました
人なつっこい性格のレオくん(推定11才)。持病があるため、なかなか譲渡につながらないそう
シェルター内には、フードを準備する部屋とトリミングルームも完備。ボードには、犬たちの毎日のゴハン量と投薬の種類が書かれています
次回はオープンしたシェルターの様子と、より多くの犬を救うために行っている活動についてレポートします。
出典/「いぬのきもち」2024年12月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/犬猫生活福祉財団
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2024年10月4日現在のものです。