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犬を叱らないほうがイイコになる!?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.75
このコラムでも、「犬の困った行動を直すのに、叱るのはNG」と以前よりお伝えしていますが、それが脳の実験からも証明されている、というお話。飼い主さんが叱らない対応に変えれば、犬の行動が必ずよくなるということがわかりますよ(編集部)。
私が毎年楽しみにしている、シンポジウムです。
犬のトレーニングにどう関係するのか? 直接関係はなさそうに思うかも……ですが、データの元となる実験にはネズミなどを使っていたりするので、動物全般に共通する話が結構登場する。
現時点で犬の脳の研究はほとんどされていないわけですが、動物全般の話は犬にも当てはまるわけで、毎年犬のトレーニングにも関係する何かが、このシンポジウムで得られる。
学習の心理学や行動分析学の理論や法則なども、そこで改めて確認できたりもします。
学習の心理学や行動分析学の正しさを追確認できる脳科学
ある講演では、学習の心理学や行動分析学で使われる言葉が、頻繁に登場してきました。
薬物依存は気持ちがよくなるのでその気持ちよさを味わいたくてやめられなくなる、そう考えるのが一般的だった。これは学習の心理学や行動分析学では、「正の強化」にあたる。
でも脳の中で起きていることは違うと。
薬物依存に陥るのは、不安がなくなったり、それを解して孤独感がなくなったりする(薬物を介しての人間関係ができる)。これは「負の強化」によるもの。
社会はそれに対して、これまでは罰則、すなわち「正の罰」を用いて、減らそうとしてきた。
しかし、それでは解決に向かわない。
なぜなら、問題の原因は不安や孤独感にあるからで、その不安や孤独感を取り除かない限り、解決には至らないから。
「負の強化」に基づく行動には、「正の罰」は用いない
そして負の強化とは「結果的に嫌なことがなくなる行動の頻度は高まる(習慣化されていく)」、正の罰とは「結果的に嫌なことが起きる行動の頻度は減っていく(その行動をやめていく)」です。
「負の強化」に基づき習慣化された行動に対して、「正の罰」を用いても解決には至らない。
これ、常に私が口にしている通りの話。
例えば、爪切りをしようとすると噛みついて抵抗する犬は、噛みつく結果嫌なことをなくしている(負の強化)。
この場合、叱ること、すなわち罰を与えること(正の罰)は、事態をいい方向に向かわせるどころか、悪化させることになる。
改善のためには、爪切りに慣らすこと。
なぜなら、爪切りが嫌でなくなれば、それをなくすための行動を行う必要がなくなるから。
まさにその考え方の正しさを、その講演は再確認させてくれたわけです。
環境が変わると行動は変わる
狭いところに閉じ込められた孤独なネズミと環境が豊かな仲間もいるネズミとでは、薬物への依存性が違う。狭いところに閉じ込められ薬物への依存性が高くなったネズミも、豊かな環境へと入れてあげると依存度は減じてくる。
環境が変われば、行動は変わる。
犬もまさにその通り。
犬に一番影響を与える環境は飼い主です。
いくら叱っても直らないと口にする飼い主は、まずは叱らないでどうすべきかを学び、対応を変えることです。
飼い主の対応が変わることは、犬にとって一番影響力のある環境が変わることを意味します。
悪い環境からいい環境へと、環境が変われば犬の行動は変わる。
まぁ、かように「脳の世紀シンポジウム」で得られることは多い。そういうことなのです。
さて、今年のテーマは何なのでしょうか? 今から楽しみです。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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