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犬をなでると人間の脳が若返る!?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.76
昨今の脳の研究から、犬と飼い主さんにまつわるおもしろいトピックをご紹介。なんと、犬をなでると人間の脳のアンチエイジングにつながるとか! 脳トレで有名な大学教授の元に、愛犬を連れて行った西川先生のエピソードを交えてお伝えします(編集部)
脳の世紀といわれる所以は、21世紀に入りfMRI(機能的磁気共鳴断層撮影装置)や光トポグラフィ(近赤外光脳機能計測装置)などの、外科的な措置を必要とせずに、人間の脳の状態を視覚的に確認できる新たな機器が広く普及してきたからです。
会話をしているときは、脳のどこが反応しているのか。計算をしているときには、脳のどこが活動しているのか。テレビゲームをしているときには?
今ではこうした数多くのことが、つまびらかにされています。
では、犬と触れ合っているときに、私たちの脳はどういった反応を示しているのでしょうか。
えっ、今回は話がちょっと難しそうって……?
まぁそう言わずに、最後までお付き合いくださいな。
fMRIと光トポグラフィ
fMRIは、脳の奥の方までの活動が視覚化できます。ただし、CTスキャンのように、ドーナツのような装置の中に、横たわって入らなければなりません。計測中に頭がわずかでも動くと、正確なデータは取れません。結果、被験者の動きは制限されることとなります。
一方、光トポグラフィは脳の表層部の活動しか視覚化できませんが、被験者は自由に動くことができます。本体と計測装置を分離できる機器まであり、例えばオートバイに乗っているときの前頭前野の活動なども確認できます。
本能的な活動ほど脳の奥の方が働き、それを抑制しているのが脳の前の部分、前頭前野と考えられています。
前頭前野は人間が他の動物と比べて最もよく発達した脳部位であるとともに、脳の発達段階では最も遅く成熟する部位です。
赤ちゃんの行動のほとんどは本能に基づいたものです。それが、思考や創造性、社会性を身につけ、人間らしく成長していきます。それは前頭前野が徐々に発達していくからに他なりません。
そして、前頭前野は老化に伴って機能低下が起こる部位のひとつでもあるのです。
前頭前野が働くのはどんなときか
K教授は、『脳を鍛える大人の計算ドリル』いった本を世に送り出していることで知られている人物です。
「脳を鍛える」というその根拠は、光トポグラフィを用い前頭前野が活動するかどうかを確認し、ドリルを作っているからです。
料理をすることやバイクに乗ることが前頭前野を活性化する、こうした意外な事実も光トポグラフィを用いた研究で明らかにされています。
何をしているときに、前頭前野が活動するのか。
光トポグラフィを用いて、それを見つけ出す。
その見つけ出した何かを行えば、前頭前野が働く、鍛えられる。
結果、人間としての成長に欠かせない前頭前野が発達する、脳のアンチエイジングにも役立つ。
犬とのふれあいがもたらすもの
話の流れで「試しに犬に触れているとき、人間の前頭前野はどうなっているのかを見てみましょうか」となり、後日私のパートナー・ドッグ「プー」を連れて再訪した次第です。
光トポグラフィのモニターには、前頭前野をイメージングした画像が映し出されます。そして、働いている前頭前野の部分は赤くなるのです。逆に働いていない部分は、青く表示されます。
結果、プーを触っているときには、前頭前野が活動しているということが確認できました。手触りのいい、癒し系と称される「ぬいぐるみ」を触っているときには、前頭前野は全く活動していませんでした。
前頭前野を働かせることが脳の発達、および脳のアンチエイジングに役立つのであれば、犬とのふれあいは、脳の発達、脳のアンチエイジングに役立つ。そういう仮設が成り立ちます。
犬は「頭がいい」だけではなく「頭にもいい」、ということなのです。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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