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大吉の試練と私の迷惑【穴澤賢の犬のはなし】

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先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

朝と夕方、歩いて5分の砂浜を散歩する。それが日課で、大雨だろうが強風で砂が舞い上がっていようが、必ず行く。なぜなら、大吉と福助はアスファルトの上ではウンチをしないからだ。しかし砂浜へ行くと、さくっとする。どうやら彼らは砂浜を排せつする場所と認識しているらしい。その証拠に用を足したら速攻で帰りたがる。ただ、その前にひとつ壁がある。

砂浜の前にある試練

砂浜へ降りるには、海沿いの国道を渡らないといけないのだが、それが大吉にとっては苦行のようだ。というのは、大吉は暴走族や、大きな音を出すバイクが雷の次に苦手なのだ。遠くからブオーンと聞こえただけでブルブル震えだす。「大丈夫だって」と言っても効果はなく、信号待ちをしている間、ずっと震えている。しかも寒くて震えるレベルではなく、全身でガクガクブルブルする。

そんなにいやなら違うところを散歩しようと、川沿いの道とか、公園とかあちこち試してみたのだが、さんざん歩いたのに結局ウンチをしないから仕方なく帰りに砂浜に寄るとあっさりする。やっぱり「砂浜=トイレ」と思っているみたいだから仕方ない。

苦手なのは国道を渡ること、正確にはバイクの音が嫌なだけで、渡って砂浜に降りれば震えはだいたい治まる。大吉にとって試練なのだろう。そして謎なのは、帰りに再び国道を渡るときは震えていないことだ。スッキリしたからなのか、どんなルールなのか分からない。

震えすぎなのも困る

それはそれでかまわないのだが、困るのが、行きの信号待ちをしているときに通り過ぎる人が、震えている大吉を「どうしたんだろう、このコ」という目で見ることだ。たまに友達同士で「あの犬、すごい震えてるね」と話したりしている。すれ違いざまにチラッと私を見たりして。あんなに犬が怯えているのに、かわいそうという感じで。

いやこれは違うんだ、と思う。しかしそこで「こいつはバイクの音が苦手でね、でも砂浜がトイレだと思っているから行かないといけなくてね……」とこっちから話しかけても逆に怪しまれるに決まっている。だから黙ってただ信号が変わるのを待つしかない。

虐待していると勘違いされるから、バイクの音なんか恐れる必要がないことを分かってくれないかな。たぶん無理だろうなぁ。隣で福助は何事もない顔をしているんだけど。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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