世界で猛威を振るう人の新型コロナウイルス感染症は、いまだ収束せず、ウイルス感染の怖さを示しています。犬にも有効な治療法がなく、ワクチンでしか予防できないウイルス感染症もあります。今回は、「寄生虫が原因の犬の感染症」について、獣医師の野矢雅彦先生に解説していただきました。
コロナ禍のペットブームで増えている「ジアルジア」
寄生虫に感染した犬のウンチを口にして感染したり、寄生虫をもっているネズミを食べたりして感染していきます。
ジアルジアに感染した犬のウンチから、ほかの犬に感染。感染力が強く、多頭飼いでは次々にうつるため、一頭でも感染が見つかれば、全頭に駆虫薬を投与。迎え入れる前の犬舎での感染が多く、子犬や保護犬によく見られます。子犬や保護犬を迎える際は、必ず糞便検査を。
<症状>
・下痢
・食欲不振
・成犬では無症状のことも など
<予防>
・迎えた犬を1週間先住犬から隔離し、その間、動物病院で糞便検査またはPCR検査を
・水たまりの水を飲ませない など
人も注意! 抵抗力の弱い子どもや高齢者にうつることも
人の症状もおもに下痢ですが、抵抗力の弱い子どもや高齢者が感染すると、下痢の症状が強く出ることもあります。
北海道だけでなく、本州の野犬にも見つかった「エキノコックス」
多包条虫(たほうじょうちゅう)が寄生したネズミを犬が食べると感染。北海道のみの感染症でしたが、本州のキツネや野犬のウンチからも多包条虫の卵が見つかり、拡大が心配されます。人への感染予防のため、外出先などでネズミを食べた可能性があれば、獣医師に相談を。
<予防>
・外出先でネズミを食べた可能性があれば駆虫薬を服用
・近辺にネズミが出ないか確認 など
人も注意! 感染犬のウンチに含まれる寄生虫の卵から感染する
犬はネズミを食べて感染しますが、人は犬やキツネのウンチから感染。犬は軽症なのに対し、人に感染すると幼虫が肝臓に寄生して肝機能を低下させます。
野生動物は、感染症の病原体をもっているおそれがあります。愛犬と接触させないよう、野生動物を見かけたら、近づきすぎずに見守る程度にしましょう。また、野生動物の死骸や弱っている野生動物にも、手を触れないように気をつけてください。
お話を伺った先生/ノヤ動物病院 院長 野矢雅彦先生
参考/「いぬのきもち」2022年2月号『犬の感染症』
写真/Getty Images
イラスト/ナカオテッペイ
文/伊藤亜希子