愛犬の体から出る分泌物は、健康チェックに役立ちます。鼻水・ヨダレ・目ヤニなどさまざまな分泌物があるなかで、今回は肛門腺と陰部から出るものに注目。獣医師の近藤仁先生に、危険な分泌物の特徴と考えられる病気を教えていただきました。
分泌物とは?
イラスト/ハニュウミキ 「いぬのきもち」2025年1月号『病気のサインが隠れています! 気をつけたい犬の分泌物リスト』
そもそも分泌物とは、体内で蓄えられ、必要なときに外に出される物質のこと。血液中などに排出される「内分泌物」と、体外にも排出される「外分泌物」の2種類がありますが、飼い主さんが変化に気づきやすいのは後者です。
外分泌物の例としては、汗・涙・唾液・皮脂・肛門嚢液などが挙げられます。体内に異変があると色・量などが変わることがあるので、ふだんと違う様子が見られる場合は注意が必要です。
気をつけたい「肛門腺」と「陰部」の分泌物
イラスト/ハニュウミキ 「いぬのきもち」2025年1月号『病気のサインが隠れています! 気をつけたい犬の分泌物リスト』
「肛門腺」の分泌物
肛門腺はお尻にある分泌腺で、犬はここから出る分泌物のニオイをかぎあって互いを認識しています。通常、この分泌物は排便時に自然と排出されます。
しかし、肛門腺の分泌物が多く、自然排出されずに蓄積したところに細菌が感染すると、肛門嚢が破裂して皮膚に穴があくことがあります。愛犬がお尻を床に擦りつけていたら要注意です。小型犬や肥満の犬などは、肛門括約筋の緊張度が低下すると起こりやすいほか、慢性的に軟便の犬も注意が必要です。
「陰部」の分泌物
避妊や去勢済みの犬では陰部から分泌物が出ることはあまりないものの、メスは膣の中を清潔に保つためにおりものが分泌されることがあります。
ただし、避妊手術を受けていないメスで陰部から黄色の膿が出る場合は、子宮蓄膿症などの病気が疑われます。また未去勢のオスの場合、前立腺炎などで性器に炎症を起こすと、先端から薄い血混じりの膿が垂れることがあります。
その他の気になる分泌物
イラスト/ハニュウミキ 「いぬのきもち」2025年1月号『病気のサインが隠れています! 気をつけたい犬の分泌物リスト』
最後に、部位を限らず、全身で皮膚に見られたら気をつけたい分泌物をご紹介します。
大量のフケ
皮膚の細胞は常に増殖しており、約1カ月で新しい細胞に変わり、古くなった細胞がフケになります。通常はほとんど目立ちませんが、膿皮症・皮脂腺炎・甲状腺機能低下症などの病気になるとフケがたくさん出る場合があります。
膿・できもの
皮膚の下に異物(植物の種など)が入りこんだり、数日前のケガなどが悪化したりして化膿すると、白血球や死んだ細胞などを含む黄色や薄ピンク色の粘液が皮膚を突き破り、膿として分泌されることがあります。
このほか、皮膚の内側に、表皮嚢腫と呼ばれる弾力性のある腫瘤(しゅりゅう)ができることも。角質・毛・汗などを含んだ袋状のもので、悪性ではありませんが、大きくなると破裂してクリーム状のものや血が分泌されることがあります。
肛門腺や陰部からの分泌物は、犬自身がなめとってしまい、飼い主さんが気づけないケースも少なくありません。犬がお尻まわりを頻繁になめていたら、分泌物が見られなくても獣医師に診てもらうとよいでしょう。
お話を伺った先生/近藤仁先生(「こんどう動物病院」院長 獣医皮膚科認定医)
参考/「いぬのきもち」2025年1月号『病気のサインが隠れています! 気をつけたい犬の分泌物リスト』
イラスト/ハニュウミキ
文/柏田ゆき