ふわふわもこもこな犬を見ると、つい「かわいい」と思いがちですが、もしかすると肥満が隠されているかもしれません。犬が肥満になるとあらゆる病気にかかりやすくなり、命を脅かすこともあるので注意が必要です。
今回は、犬の肥満がもたらす病気・トラブルや、犬の肥満を防ぐ方法について、獣医師の牛草貴博先生に教えていただきました。
肥満がもたらす病気やトラブル
犬の肥満は、下記のような病気やトラブルを引き起こすおそれがあります。
糖尿病・がんのリスク
肥満になると、蓄えた脂肪から炎症を引き起こす物質が分泌され、さまざまな部位に炎症を引き起こします。この炎症が免疫機能やホルモンに影響を与え、がんや糖尿病の引き金になることも。
呼吸器疾患
太ると首まわりにも脂肪がつき、気道を圧迫して正常な呼吸ができなくなる呼吸器疾患の原因に。とくに生まれつき気道が狭くなりがちな短頭種は注意が必要でしょう。
関節への負担
肥満が原因でひざやひじ、股関節などに過度な負担がかかり続けると、関節の軟骨などが損傷します。関節の痛みや腫れ、こわばりなどが続くと、関節が変形する病気になることも。
手術時のリスクが高まる
手術の際に皮下脂肪で臓器が見えにくい、脂肪で器具などが滑るなどの理由から、手術に時間がかかることがあります。また、麻酔から覚めにくい、出血量が多くなりやすいといったリスクも。
シニア期のQOL低下
肥満による体への負荷は、関節炎の悪化をはじめとした悪影響を全身にもたらします。痛みで元気がなくなったり、寝たきりになったりするなど、将来の生活の質を低下させる可能性があるでしょう。
飼い主さんの体重管理で肥満はほぼ100%防げる
このように、犬の肥満は恐ろしいですが、飼い主さんがお世話を見直し、体重を管理することで防ぐことができます。
健康診断で獣医師に診てもらう
成犬では年に1回、シニア犬では半年に1回は健康診断を受け、獣医師に体重もチェックしてもらいましょう。客観的な目でしっかり判断してもらえるほか、健康診断の結果と合わせて病気の早期発見につながることも。
こまめに体重を計測する
定期的に愛犬の体重を計測し、理想体重を超えていないかを確認しましょう。同じ犬種でも骨格や筋肉量などが異なるため、体型も重要です。愛犬の体を横や上から見るほか、腰のくびれがあるか、ろっ骨に指で触れられるかを触ってチェックしましょう。
毎日しっかり散歩をする
散歩などで運動をしっかり行うと筋肉を維持できるほか、腸内環境のバランスが整って肥満から守ることに役立ちます。坂道を上ったり芝生の広場歩かせたりする工夫をしても。
おやつを与えすぎない
愛犬を喜ばせたいという気持ちのあまり、ついおやつを与えすぎてしまうほか、家族がそれぞれにおやつを与える習慣があると、1日の総量がわかりにくくなりがちに。1日分のおやつは取り分けておき、家族みんながその中から与えるようにしましょう。おやつを小さく切るなどして、量ではなく回数を増やすのもよいでしょう。
フードを見直す
フードは目分量で与えず、しっかりと計測して与えましょう。また、避妊・去勢手術後やライフステージの変化によって代謝が落ちると、必要なエネルギー量が減少します。愛犬のライフステージごとにフードを見直し、適正量を与えて体型の維持に努めましょう。
肥満は万病のもとです。愛犬にいつまでも元気で過ごしてもらうためにも、生活習慣を今一度見直してみましょう。
お話を伺った先生/牛草貴博先生(VCAJ横浜どうぶつ医療センター、関内どうぶつクリニック代表 獣医師 博士(獣医学)株式会社12薬局取締役 酪農学園大学特任准教授)
参考/「いぬのきもち」2025年10月号『愛犬の命を脅かす原因に! 肥満ってこんなにコワイ!!』
文/長谷部サチ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。