先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
以前も書いたが、わが家では大吉と福助に定期検診を受けさせている。具体的には血液生化学検査といって、血清中の成分を化学的反応や酵素反応を利用して分析し、各数値が正常範囲内に収まっているかどうか、栄養状態はどうかなどを見る検査だ。
早期発見の期待も込めて受診する
また、フィラリアやノミ・ダニ予防薬(うちは同時にできるパノラミス)も、春に秋までの分をもらえばいいのだが、あえて2カ月に1度くらいに動物病院に取りに行くようにしている。その度に触診してもらうためだ。飼い主では気が付かないことも獣医であれば発見できるかもしれないという期待からそうしている。
いくら定期的に健康診断をしていても、突然死があることは経験上知っているが(富士丸もちゃんとしていた)、だからといって定期検診に意味がないとは思わない。それにより異常があればいち早く気付く可能性が高いし、対処することもできるからだ。少なくとも発見したときには手遅れで、打つ手がないのを避けられると思っている。
いくらそれなりに意思疎通ができるとはいえ、体調の細かいことまでは分からないし、わずかな異常ならおそらく犬にも自覚はないだろう。だから定期検診に頼っている。なぜ毎晩酒を飲む自分に対してはそう思わないんだお前は!という声が動物病院に行く度に脳内に響く。近いうちに検査しなくては、大福のためにも。
当たり前の日常がずっと続くように
犬はたぶん、死を恐れてはいない。おそらく長生きしたいとも思っていない。そもそも死の概念がなく、今日と同じ明日が来ると思っているはずだ。だから私はそんな日が長く続くことを願うしかない。そのために定期検診を受けさせている。自分がいなくなった後のことなんて、彼らは考えていないだろう。それでいいし、知らなくていいと思う。
先日も、10才になった大吉の血液生化学検査の結果を聞きに病院へ行ってきた。結果はほぼ異常なし。唯一、腎臓の数値がやや高いがそれほど心配ではないとのことだった。だから念のため、近々尿検査を受ける予定だ。
福助はまったく異常なし。7才にしてはいたって健康体とのことだった。あぁ、よかったよかった。本人は動物病院に入るのを全力で拒否って、診察台の上でもずっと不満そうだったが。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。