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私のわずかな達成感【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

やる前から大変だと分かっていることを、好き好んでやる人はまずいない。本当はやりたくないけど、それを片付けないといけないから、あるいは乗り越えた先のものを目指して頑張るのだ。夢や目標、世のため人のため自分のため、終わった後のビールのためでもいい。

求めているのは達成感?

誰しも何かを成し遂げたときの達成感を求めているのではないかと思う。それは満たされることはなく、ひと山越えると、次が見える。人によってそれぞれ違うが、その連続ではないだろうか。ただ一瞬の「やり終えた」という達成感を味わうために。
私はここ数年、春から秋は山の家の草刈りばかりしている。別に好きでやっているわけではない。やってみるとかなりの重労働だし、力仕事が嫌いな私はできれば避けて通りたい。
しかし放置していると、クマザサやタンポポがどんどん侵食してくる。本当に驚くべき早さで成長する。そうなると、せっかく作ったドッグランが雑草だらけになってしまう。だから仕方なく草刈りしているのだ。毎回汗だくになりながら。

根気の雑草刈りに地元からのアドバイス

けれどいつまで経っても雑草はなくならない。草刈りした2週間後には、またそこら中に生えている。いつまで経っても終わらない。そんなとき、地元の人が教えてくれた。タンポポは根ごと引っこ抜かないとだめだ、だからすぐに生えてくるのだと。
そこで意を決して、草刈り機ではなく、シャベルで周囲を掘りながらタンポポを根ごと抜くことにした。これがまた大変で、注意しないと根が途中で切れてしまうのだ。
だからそうならないよう慎重にやらねばならない。けれど、そこら中タンポポだらけで、200本以上生えているから時間がかかる。
結局、丸2日ほどかかってドッグランのタンポポは抜ききった。私は疲れ果てソファーに横になりながら、わずかな達成感を覚えた。やりきった。これでやっとタンポポからは解放される、たぶん。
そう思いながら寝落ちしそうになる私に寄り添い、なぜか大吉と福助も満足げに寝ていた。作業している横で遊んでいただけなのに。まぁ、彼らのためにやったんだからそれでいいのだが。ちなみに、ドッグランの外もタンポポだらけなのだが、それは見なかったことにしている。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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