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犬の方が懐が深い?【穴澤賢の犬のはなし】

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先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

大吉と福助を見ていて、たまに不思議に思うことがある。彼らは本気でけんかすることがないのだ。バトルやオモチャの奪い合いなどはするが、それはあくまでも遊びの範疇で、そこからヒートアップしてガチげんかになることはない。「そんなのうちだってそうだよ」と思うかもしれないが、よく考えるとこれはすごいことだ。人間はそうはいかない。少なくとも、私にはできない。

人は争う生き物!?

それは「けんかっ早い」とか「気が短い」という意味ではない。私だって若い頃から街でけんかなんてしないし、気に食わないからってブチ切れることもない。友人と揉めた記憶もない。ただ、親や兄弟、過去に付き合った女性、嫁など一緒にいる時間が長くなると、多少のいざこざはある。

けんかといっても殴り合ったりするわけではなく、一方的にムカついたり、いきなり相手からキレられて「なんだよ!こっちはこっちでな!」と言い合いになったり、まぁ他愛ないといえば他愛ないことなのだが、その時点では本気で腹が立つし、しばらく口もきかない、なんてことになる。

多かれ少なかれ、誰だってそんな経験はあるだろうし、そうやって多少はぶつかりつつ人間関係を築いていくものだろうくらいに思っていた、特に若い頃は。けんかの原因だって思い出せないくらい些細なことだが、どっちが悪いという問題でもなく、お互いなんとなく合わないと別れた人もいる。

懐が深い大吉

恋愛の場合はそれで終わりだが、家族となるとそうもいかない。四六時中一緒にいると、ほんの些細なことが積もり積もってゆく。そしてどちらかがちょっと文句を言うと、険悪な空気なる。私はもともと温厚で物腰柔らかく平和主義だが、夫婦げんかくらいはしたことがある。50歳になった今でも、たまに嫁の行動にイラッとすることがある。ようするに、人間ができてないのだ。

しかし大吉と福助を見ていると、いつも一緒なのに衝突しない。けんかもしなければ、険悪な雰囲気になっているのも見たことがない。しかも、福助は必ず大吉のオモチャを奪おうとするし、隙を見て突然襲いかかったり、やりたい放題なのに、だ。

これはひとえに大吉の寛大な心があってこそだとは思うが、そんな福助も大吉の姿が見えないと不安そうな顔をしたり、クゥ〜ンと泣いたりするから、すごく好きなのは伝わってくる。

ごくまれに複数飼いでも相性が悪く、いつまでも仲良くなれない犬猫もいるらしいが、私が知っている友人宅の犬たち(猫も)が本気でけんかしているのを見たことがない。人間社会の方がよっぽど色々ある。

犬たちのその距離感というか、率直さ、懐の深さは、尊敬してしまう。私も大吉のように、懐が深くなりたい。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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