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壮絶な環境から救い出された子犬、ペットロスを経験した家族の笑顔を取り戻す存在に

困り顔(笑)のビンゴちゃん
16才と14才の愛犬2頭を立て続けに亡くしたmemさん。自身のダメージが大きかったことに加え、お母さんがペットロスに苦しんだといいます。
お母さんは、犬を亡くしてからほかの犬を見ると「うちのコはもういない。散歩もさせてあげられないのに」と複雑な気持ちを抱いたり、「あの時、ああしてあげればよかった」と後悔の念を吐露したりで、「もう二度とあんな思いはしたくない」と泣くこともありました。

memさんは、その痛々しい姿を見て、「もう犬を二度と飼うことはないかな」と思うにまで至ったのですが、それから約3年後に新たな犬との出会いが…。

今回は、memさんとご家族、かけがえのない存在になった愛犬とのお話を伺いました

子犬の壮絶体験に思わず涙&トライアル中にお母さんの様子に変化が見られ…

2頭を亡くしてから3年以上経ったある日、お父さんが知り合いのブリーダーを通して「犬を迎え入れようか?」と提案。memさんはいったんそれを保留にし、以前から気になっていた動物の保護施設に、家族みんなで見学に行くことにしました。
続けて、飼う飼わないにかかわらず、譲渡会にも足を運んでみようという話になったその日に、memさんはある保護犬の情報を目にします。
マングローブに遺棄されていたという推定3カ月の子犬で、memさんは「どうしてもこのコが気になる!」と2日後の譲渡会で会うことに決めました。

実際に子犬に会ってみたときのmemさんは、「タレ目でものすごく困った顔にしか見えないところや太くて短い脚、つんつるてんのおなかがかわいくてかわいくて」と惹きつけられました。
子犬には愛らしい外見からは想像できない、壮絶な環境を生き抜いた過去があったといいます。
マングローブで保護されたときの状況は悲劇的で、空腹のあまり木の皮や根を食べて生きながらえたこと。おなかの中には回虫が、体表にはノミダニが群がっていたこと。保護された当日は雨が降っており、あと1日遅ければ生きていられなかったかもしれないこと…。そんな惨状を聞いて涙したmemさんは、すぐにトライアルを申し込みました。

2週間のトライアル中、先代犬を見送ったことで痛感したという犬の飼い方の知識不足を改善していくこと、命を受け渡してもらうことの重さ、金銭面の負担、考えられるリスク、メリット・デメリットなどを家族みんなで話し合ったといいます。

また、驚くことも起こりました。譲渡会では「情が移るから…」と頑なに犬との接触を拒んでいたお母さんが、子犬を抱っこして「かわいい…。かわいいねぇ」となでるようになったのです。

これが決め手となり、正式に子犬を引き取ることになりました。

一家に幸せを運んできたビンゴちゃん、ペットロスだったお母さんの心も癒すように

ほかの犬が苦手だったというビンゴちゃん、今は元気いっぱい一緒に走り回ります 
強運・幸運の持ち主ということで、名前は「ビンゴ」ちゃんに決定。
人が大好きだけれど、犬は苦手だというビンゴちゃん。お尻を嗅がれるのを特に嫌がり、しつこくされると怒って噛むふりをして、ドッグランで他の犬とけんかになりかけたこともあり、memさんは解決法を求めていました。
そこで月1~2回、犬のための保育園に通わせることにすると、効果は上々。
他の犬に慣れてきて、嫌なことをされたら逃げる&隠れるという手段を覚えて攻撃性がなくなったといいます。

一家に仲間入りしてから、一歩一歩、成長中のビンゴちゃん。
体重は14キロを超えました。

過去、ペットロスに苦しんだお母さんは「かわいいね。いい子だね」と毎日ビンゴちゃんをかわいがり、溺愛しています。「芸やコマンドを教えるのがプロ級(笑)」という中学生の娘さんは、ビンゴちゃんに「バーン!!!」という芸を教え込んで毎日披露しているそうです。

ビンゴちゃんのおかげで家族みんなに笑顔が戻ってきました。

ビンゴちゃんが保護された場所を訪問、改めて今ここにいてくれることに感謝

ビンゴちゃんが保護された場所
ビンゴちゃんを迎えてから約8カ月後。memさんが独自に決めた(正確には不明のため)ビンゴちゃんの誕生日に、ビンゴちゃんを譲渡してくれた団体の譲渡会へビンゴちゃんと共に遊びに行ったというmemさん。
そこで、ビンゴちゃんをマングローブで保護した方がビンゴちゃんに会いたがっていると聞き、会うことになりました。

この出会いがきっかけで、memさんはビンゴちゃんが実際に保護された場所を訪れることに。「どんな場所でこのコが助けを求めていたのか、見ておきたかった」からです。自宅から2時間ほど車を走らせて、現地に向かいました。

「想像を絶する場所でした」と振り返るmemさん。
高さがかなりあり、ハシゴがなければ到達できないようなところだったそうです。もともと陸地がないところもあり、雨が降ると全体的に陸地がなくなって「とても生後3カ月の子犬がたどり着ける場所ではない」思ったそうです。
保護主さんによると、ビンゴちゃんを発見した保護主さんは、その場をいったん離れてハシゴを持って戻ってきたのですが、その際にビンゴちゃんは走り寄ってきたというのです。人に捨てられたと考えられるビンゴちゃんが、人を信じて走り寄る姿を想像すると、胸が痛みます。
こんなに大きくなりました。美人さん!
「あんな環境にいたのかと思うと悔しくて悲しいと同時に、今ここにいてくれることへの感謝と愛しさが増し、絶対に幸せにするんだという想いが強くなりました」とmemさん。

保護主さんは、ビンゴちゃんを引き取りたかったものの事情があって引き取れなかったのですが、ずっと気がかりだったとのこと。そう聞いたmemさんは、また会いに行く約束をしたそうです。

「このコが来てくれたおかげえたくさんの人と出会い、たくさんの幸せをもらっています。これから先、どれだけこのコといられるかわかりません。その時が来るまで、後悔のないよう愛情を込めて暮らしていこうと決意しました」。
取材協力・写真提供/memさん
Instagram(@mem_2130)
取材・文/賀来 比呂美
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