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スポーツも犬のしつけも、叱る指導は昭和まで!|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.126
この連載では「叱ったり罰を与えたりしなくても、しつけは可能」とお伝えしていますが、西川先生によると、その動きはスポーツ界でも顕著だそう。叱って従わせるとどうなるか、スポーツを例に、犬のしつけを考えます(編集部)。
理由は「行き過ぎた勝利至上主義が散見される」こととされています。
行き過ぎた勝利至上主義とは……具体的には、勝つために指導者が子どもに減量を強いたり、指導者や保護者が審判に罵声を浴びせるなどの行為、などが挙げられていました。
私が目にした記事にはありませんでしたが、そこには指導者が叱責する(叱る、怒る)というものも隠されているのだと想像ができます。
柔道に限らずスポーツの世界は、選手を強くするために指導者が「叱る、怒る」ことが、特に日本の場合は昔から行われていました。
バレーボールの元日本代表の益子直美さんは、指導者が選手を怒鳴ったり高圧的な態度を取るのをNGとする、「絶対に怒ってはいけないバレーボール大会」なるものを行っているそうです。
「怒って従わせる指導は昭和のもの、その役割は終えている」という主旨のことを、益子さんは新聞のインタビューで答えています。
何を言いたいのかというと、犬のしつけも同様ということを、改めて言いたいわけです。
選手のためよりも、自分のため?
前回のコラムで、叱る行為は叱る側のドーパミン回路を刺激すると、書籍『「叱る依存」がとまらない』に出ていることを紹介しました。
なんか同じ匂いがします。
叱るのは、叱る側にとっていいことが起きているから。
イコールではないのですが、指導者が子どもたちを「叱る、怒る」のも似ているかと思います。
桑田真澄さんは体罰などに否定的ですが、彼はそうした指導の結果多くの才能ある仲間が潰されていった、と語っています。
子どもたちは数年で代替わりしていきます。
その中で、わずかでも優秀な成績を収める子どもが現れると、指導者は評価される。
でも、その陰で多くの子どもたちが、ドロップアウトしていく。
ドロップアウトは許されない家庭犬のしつけ
それではまずいのです、家庭犬のしつけは。うまくいかなかったから、次の犬をとはいかないのです。
マズルをつかむ、仰向けに押さえつけるなど、犬のしつけに関しては古くから知れ渡っている叱り方があります。
もちろん効果は期待できないわけですが、全くうまくいかないのであればあれほど広まりはしません。
おそらくうまくいった例があるのです。わずかながら。
でもそれは、「一部の成功の影に、多くのドロップアウトしていった存在がある」と同様なのです。多くは変わらないか、悪化していく。
書籍『「叱る依存」がとまらない』ではコレ、生存者バイアス(脱落したものや淘汰されたものを評価することなく、生き残ったものだけを評価する思い込み)という言い方で、取り上げています。
脱・昭和の指導、昭和のしつけ
高橋尚子さんがシドニーで金メダルを取ったのは、2000年。平成12年のことです。「怒ると萎縮してしまう」ということで、ひたすらほめることで、高橋尚子さんを世界一に育てました。
それから、22年。時代は代わり、元号も平成から令和へ。
叱ることは簡単です(特に感情にまかせて叱るのは)。求める犬の姿が番犬、共生関係を目指しているわけでもなかった、外で飼っていた昭和の時代はそれでよかったのでしょう。
でも時代は令和です。
求める姿が違います。うまくいかないからと、外につないで飼えばいい、というわけにもいかないのです。
リビングでいっしょに生活し、どこにでも連れていくことができ、楽しい時間を共有できる、すなわち犬との共生を目指すのであれば、ドロップアウトが起きない方法、叱らない方法を選択すべきなのです。
おっと、文字数がまたもや限界に。
今回も最後に『「叱る依存」がとまらない』にも記されていて、私もよく口にする言葉を記しておきましょう。その言葉とは
<叱ったり罰を与えたりしなくても、しつけは可能>
ということで、では、また次回。
西川文二氏 プロフィール
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