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最近わかった、叱るしつけをやめられない・正当化したい理由|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.125

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「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今はほめるしつけが主流なのに、叱るしつけを続けている飼い主さんがいるのも事実。叱るしつけをやめられない、正当化したいのは、それが正しいと信じている以外にも理由があることが判明! 西川先生が解説します(編集部)。


当連載は今回で125回目を迎えるわけですが、調べるとそのうち15回は「叱ってはいけない」「叱らないでもしつけはできる」という内容。
「でも、叱るときはちゃんと叱らなくちゃ」
しつけとは叱ること、叱ればよくなる、叱らないのは甘やかし、といった刷り込みは本当に根強い。
手を変え品を変えさまざまな角度から論理的に、具体例を挙げて「叱ること」の弊害および「叱らないでもしつけはできる」と訴えても、「でも……」と声が返ってくる。
なぜ、理解してもらえないのか。
その理由がわかりました。
それは刷り込みだけではなかったのです。なんと、それは……、
まあ、聞いてください。

「叱る依存」が止まらない

コレ、今年2月に出たばかりの本のタイトルです。
著者は村中直人氏。肩書は臨床心理士・公認心理師とのこと。
この本では、当コラムで記した「叱ることの弊害」「叱ることをなぜ排除すべきなのか」など説明を、違った言い方を用いて行ったりしています。
例えば、当コラムVol.21で取り上げた、ポジティブマインドとネガティブマインド。
ポジティブマインドとは、何かをするといいことが起きる、その何かを考えて行動することを主軸とするマインド。
当書では、それを「冒険モード」と称して、説明しています。
一方、嫌なことが起きるかもしれない、自発的な行動を起こさない方が安全、という思考が主軸となるのがネガティブマインド。それを、当書は「ネガティブ感情、防御モード」という言い回しで語っている。
そういった意味では、当書は私の考え、その多くの正しさを再確認させてくれるわけですが、それだけではないのです。
目から鱗的なというか、膝を叩く的というか、そういった発見も当書には多々ありました。

『<叱る依存>がとまらない』村中直人著(1760円/紀伊国屋書店)。すべての飼い主に読んでいただきたい一冊
Can! Do! Pet Dog School

叱ることは、報酬系回路を刺激する?

報酬系回路に関しては、本コラムVol.41で取り上げています。
ドーパミンという脳内物質が放出される回路で、そこが働くとやる気になって記憶も高まる。結果的にいいことが起きた行動が習慣化されるのは、この報酬系回路が働くから。
先のポジティブマインドや、冒険モードはまさに、この回路に密接に関係している。
一方、叱られると報酬系回路は働かない。
別系統の回路、当書ではそれを防御システムと呼んでいるのですが、そちらが働く。
ここまでは「叱られる側」の脳の反応なわけですが、当書に「え? そうなんだ」と教えられたのは、「叱っている側」の脳の反応。
なんと、叱っている側では、先の報酬系回路が働いているという。
そう、叱る側では脳内にドーパミンが放出されている、報酬系回路が働いている。結果的に、報酬系回路が働く行動は習慣化する。
叱ることを排除することの重要性をいくら説明しても、「でも……」と納得できないのは、そういった理由があったのです。
叱るのは相手のためではなく、自分にとっていいことが起きるから。
相手のために叱るなどというのは詭弁で、自分にとっていいことが起きているからだった
のです。

もうひとつの驚きの視点

それは依存症との共通点を挙げていること。
薬物依存やギャンブル依存など、さまざまな依存症が存在します。
かつてはその気持ちいい体験が忘れられずに繰り返すなどと考えられていたわけですが、近年は「不安や苦痛から逃れられる行為」。結果的に嫌なことがなくなる行動は習慣化していく(=負の強化)わけですから、原因は何かしらの「不安や苦痛」があるからでは、と考えられているのです(コラムVol.75参照)。
例えば、叱るのは、叱る側の望まない行動を叱られる側がとっているから。
望まない行動をとっているのを目にするのは、ある意味「苦痛」です。
叱ることでその「苦痛」から逃れられる。ただ、それは一時的で長続きするものではない。
しばらくすると、また望まない行動をとっている。そこでまた目の前の「苦痛」から逃れられるために、叱る。

まぁそうした悪循環が生まれているということです。
文字数もそろそろ限界なので、兎にも角にも、叱らないことに対して「でも……」とつい考えてしまう方は、ぜひともご一読いただきたいところです。
あ、それと最後に。
当書にも記されていて、私もよく口にする言葉を記しておきましょう。
その言葉とは
<「上手な叱り方」は、残念ながら存在しません>
です。
ということで、では、また次回。

叱る側では、いいことが起きている、と同時に嫌なことがなくなっている。コレ、わかっちゃいるけどやめられない、依存症と酷似
Can! Do! Pet Dog School

文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(17才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。

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