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犬のしつけを「知っている」から「できる」になるまでの期間|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.127
犬のしつけは、「やり方を知っている」だけではなく、「できる」状態まで練習することが大事だと西川先生は話します。「できる」状態になるには、およそどのくらいかかるのでしょうか? その目安がわかります(編集部)。
その文学賞に輝いた日本人作家は未だ2人。
一人は川端康成、もう一人は大江健三郎。
どこで目にしたか忘れましたが(新聞記事だったかな)、その大江健三郎が次のようなことを語っていた(と思う)。
物事には「知る」と「わかる」と「さとる」があって、段階が違うと。
「知る」とは文字通り「知っている」段階。
「わかる」はそれを自分で使えるようになるレベル。
そして、「さとる」は未知なできごとも自力で解決できる、「わかる」の先にある。
正確ではないかもしれないけど、私はそう理解しました。
いい加減な形ながらそれを記憶しているのは、インストラクターになる過程で、まさに同様のステップアップをたどってきたからです。
インストラクターを目指さなくても、良き飼い主になることを目指すのであれば、ぜひ理解してほしい内容でもあります。
ということで、今回は……。
さらに2つ足して5つの階層に
ひとつは、「知っている」の前。「聞いたことがある」。
犬のトレーニングは、動きを伴います。こちら(人間)の動き次第で、犬の動きは変わる。と同時に、犬の動きに合わせて、こちらの動きも変える必要が生じる。
例えば車の運転の筆記テストがあったとすれば、「知っている」とは、それにヒントもなしに答えられるようなレベルです。
筆記テストに答えられずに、答え合わせをして「あ、そうそう、そうだった」と思い出すのが、「聞いたことがある」です。
いずれも、実際の運転ができるかどうかは別の話です。
実際の運転ができるようになるのが、「わかる」です。
そしてもうひとつの、加えている階層。それは、未知なできごとも自力で解決できる「さとる」の先、「教えられる」です。
「わかる」を「できる」に、「さとる」を「応用できる」に言い変えて
「聞いたことある」、「知っている」、「できる」、「応用できる」、「教えられる」
の5つ。
私はJAHA(公益社団法人日本動物病院協会)のインストラクター養成講座を受講して、インストラクター認定を授かっているわけですが、先程記したようにそのインストラクターへの道程は、まさにこのステップアップをたどっていくことでした。
まずは座学を受け、用意された犬を通して、動きを学びます。ここまでで「知っている」レベルに(座学を受講した程度では“聞いたことがある”レベル)。
次に、自分の犬をトレーニングして、定められたテストに犬を合格させないといけません。
そのテストに合格できて、「できる」です。
その先にあるのが、「応用できる」、「教えられる」。
現在のカリキュラムでは、最終的に認定試験に合格する必要があるわけですが、その認定試験では問題行動に対する改善のためのアドバイスができることと、数組の犬連れを対象にプロとしてふさわしいグループレッスンを行うことができること、その2点が試されます。
問題行動に対する改善のためのアドバイスが「応用できる」、プロとしてふさわしいグループレッスンを行うことができるのが、「教えられる」レベルということです。
「できる」まででも数カ月は必要
私のスクールでは、クラスに参加する前にまずは2時間半程度の座学に参加してもらいます。
話の内容は、翌日には8割方忘れているようなものですから、この段階では「聞いたことがある」です。
その後、クラスに参加して、自らの犬のトレーニングを通じて「知っている」から「できる」まで、階段を昇っていってもらいます。
そこまでいくのには、5〜6カ月は要する。
コラムVol.83「犬のしつけ教室、どのくらい通えばいい?」では6カ月程度必要という話をしていますが、その理由はここにもあるのです。
冒頭に話しましたが、私の理解は大江健三郎が言わんとすることと違うかもしれません。でもいいのです、違っていても。
インスパイアされたことは事実ですので……。
ところでノーベル文学賞。
村上春樹は、かの賞の女神に見初められる日が来るのでしょうか。気になるところです。
西川文二氏 プロフィール
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