犬が好き
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多頭飼育崩壊から救われた保護犬に「安心していいんだよ」と伝える日々 8年経ち、何気ない行動が愛おしいかげがえのない存在に
片隅で震えるアンちゃんに出会い、迎え入れることを決意
「愛犬と一緒に過ごした日々は笑顔とともにあり、かけがえのない時間でした。『保護犬だった先代犬も喜んでくれるのでは?』と妻が後押ししてくれたこともあり、保護センターへ足を運びました」
多頭飼育崩壊の現場から救われたという、兄弟犬を含む50頭近くの犬たちはすでに引き取られた中、引き取りに至らずにいたのがアンちゃんでした。
初めて出会ったときは声も出さず、表情が変わることもなかったというアンちゃん。目を合わせることもできませんでしたが、それでもたまらなく愛おしく感じ、家に迎えることを決意します。
「大好きだよ」「いいコだね」を言葉とスキンシップで伝え続ける
迎えたばかりの頃は、部屋の隅でじっと動かず、鳴いたり吠えたりすることもありませんでした。あまりにも動かないので心配になり、留守中の様子をビデオ撮影してみたところ、楽しそうに部屋の中を歩き、ニオイを嗅いで回るアンちゃんの姿が。
「具合が悪いわけではないのだ」とひと安心します。
そこで毎朝いちばんに、そっと頭をなでながら「アンちゃんはいいコだよ。うちの大事な家族だよ」と声をかけることに。反応がなくても話しかけるよう心がけ、「アンちゃんが大好き」と伝え続けます。
ごはんも、人の視線を感じると食べるのを止めてしまっていました。そこで、ごはんを食べたり、何かに興味をもってくわえたりしたら、それが危険なものでない限り「よく食べられたね」「上手に遊べたね」と褒めることに。
お散歩も怖がって行きたがらないため、近くの公園まで抱っこで向かい、そこで降ろすと家に帰りたい一心で走って帰る…といった具合。
そこでお散歩後はリラックスできるよう、背中や腰のマッサージをしながら時間をかけて褒めてあげるようにしたそう。
すると徐々にしっぽをくるんっと上げてお散歩ができるようになり、今では帰宅後にフセをしてマッサージをせがむまでになりました。
アンちゃんの何気ない行為ひとつひとつに心和む日々
ソファでうたたねをしているとアンちゃんが一緒に寝ていることもあるそうで、「ふと目が覚めたときにソファの上から私の顔を見つめるアンを見ているととてもあたたかい気持ちになります」とジャーキーさん。
「感情表現が苦手でぬいぐるみのようにじっとしているコだったので、ごはんを食べたり、トイレをしたり、散歩に行ったりと当たり前のように思える何気ない行為ひとつひとつがとても愛しく、心を和ませてくれます。
何よりそばに来て笑顔を見せてくれたとき、このコは我々にとって本当にかけがえのない自慢の娘だと心から思います」
家族が増え、アンちゃんにさまざまな変化が
子猫だったトランくんが遊びに誘うと、しっぽを猫じゃらしのようにパタパタと動かして遊んであげたり、トランくんがクンクンと甘えて寄ってくると同じように鼻をスリスリ。
まるまって眠るアンちゃんに包まれるようにトランくんが寝ていることも。
アンちゃんを迎え入れてから8年。
ジャーキーさん一家の愛情やトランくんとのふれあいを通し、自分なりに意志を伝えるまでになったというアンちゃん。
おねだりをするときはおすわりをし、満面の笑みでじっと見つめてくるそうで、「我が家では“つぶらな瞳作戦”と呼んでいます」とジャーキーさん。
家族の一員として毎日をのびのびと過ごしています。
取材協力・写真提供/ジャーキーさん(大阪府)
取材・文/青柳恵美香
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