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犬・猫と暮らすこと 犬を飼う前に【穴澤賢の犬のはなし】

<お知らせ>
「穴澤賢の犬のはなし」5月の更新は各週となります。次回の更新は5月13日(月)の予定です。

なお、この期間中は当サイト内のコンテンツ 「犬のこと猫のこと」で、映画「犬と猫と人間と2 動物たちの大 震災」のプロデューサー飯田さん、宍戸監督、穴澤賢による対談記事を 4週に渡りお届けします。

第1回は5月8日(水)にアップ予定ですので、 ぜひそちらもチェックしてみてください。
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Vol.6 犬を飼う前に

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昨年、大吉を連れて奥秩父のキャンプ場に行ったときのこと。隣のバンガローに若者のグループがいた。おそらく20代中頃だろうか。男女6名ほどが、楽しそうにバーベキューをしていた。こちらも大吉に長めのリードをつけて、のんびりビールを飲んでいた。すると、大吉に気付いた若者グループの何人かが近づいてきて「なんていう犬種ですか?」とか「名前はなんて言うんですか?」などと話しかけてきた。女の子たちは「可愛いー! 触ってもいいですか?」と言いながら、しゃがんで大吉に手を伸ばしている。適当に返事をしながら、好きなようにさせていると、満足したのか若者たちは自分たちの場所へ引き上げていった。
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しばらくすると、またそのグループの中からひとりの兄ちゃんが近づいてきて、大吉の前にしゃがみこんだ。見た目は若干チャラいが、腰が低く、お人好しな印象だった。彼はたぶんグループの中でも特に犬が好きなのだろう。それからもちょくちょくやってきては、大吉を見て嬉しそうな顔をしている。大吉も喜んでしっぽを振っていたので、そんな様子を眺めていた。

そしたら彼は、大吉をなでながら独り言のように「俺、犬って大好きなんスよねぇ」としみじみ言うのだった。あぁそうなのね、と思っていると彼はさらにこう言った。「俺、前にチワワ飼ってたんスよ。でも飼いきれなくて、今は実家で面倒見てもらってるんです。でも、またいつか犬を飼いたいなぁと思ってるんスよ」と。それを聞いて思わずズッコケそうになった。
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チワワが飼いきれないって、何? 大型犬ならいざ知らず、あんなに小さい犬に根を上げてどうする。それなのにまた犬が飼いたい? 悪いことは言わん。君みたいな子はもう犬を飼わん方がいい。実家の犬がまた増えるだけだから。

そう言ってやりそうになったが、せっかく仲間たちと遊びに来ているのに、見ず知らずのおっさんが突然説教するのもどうかと思い、ぐっと堪えた。同時に、一般的な若者の認識はこの程度なのかもしれないな、とも思った。昭和育ちで、近所の空き地にまだ野良犬がいた時代を知っている自分たちの世代とは感覚が全然違うのだろう。子どもの頃、犬や猫はもらうか拾ってくるものだった。ペットショップもあるにはあったが、少なくとも大阪の下町ではそうだった。
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今は「ペットを飼う=購入する(買う)」のが当たり前の時代になっている。別に犬や猫を買うことが悪いとはいわない。純血種だろうが雑種だろうが、買おうがもらおうが、最後までしっかり面倒を見てやればいいだけだ。ブリーダーだって、しっかり勉強して強い個体を残そうと努力している人も多くいる。

ただ、犬種に流行りすたりがあるのは、ちょっとおかしいと思う。流行りがあるから、ブームに飛びついて安易にペットを飼う人がいる。で、飼いきれずに捨ててしまう人が現れる。キャンプ場で会った兄ちゃんの場合は実家だが、最悪の場合は施設に行くことになる。
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これは富士丸のブログをやりはじめた頃からずっと言い続けていることだが、ペットブームの影で、タダでも誰にももらってもらえず、人知れず殺されている犬や猫がたくさんいる。これは、どう考えてもおかしい。富士丸だって、大吉だって、どちらもタダでもらってきた犬だ。我が家にやって来なければ、やつらだってどうなっていたのかわからない。現実に、そういう運命を辿る犬猫は今もいる。かといって、可哀想だからと、どんどん引き取るわけにもいかない。
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だから、これから犬や猫を飼いたいと考えている人がいたら、知ってほしい。ペットは「買う」以外に「飼う」方法もあるんだということを。そのうえで、どうしても好きな犬種があるのなら、そのときはペットショップかブリーダーから買えばいいと思う(見た目だけでなく、その犬種の特性を少しは理解したうえで)。選択肢のひとつとして、里親募集からもらい受けるということを加えてほしいだけなのだ。

ただ好きなだけでは犬は飼えない。お金もかかるし、苦労もある。けれども、あまりかまえる必要はないと思う。どんなことがあっても最後まで面倒は見るという約束を守ることと、どんなときも犬は悪くないということさえ覚えておけば、たぶん大丈夫。そうすれば、どんな犬でもきっと人間の愛情にこたえてくれる。苦労なんて苦労だとも感じなくなる。犬との暮らしは、そういうものだ。キャンプ場の兄ちゃん、読んでくれてるといいんだけど。
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