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退院余談〜その1「穴澤賢の犬のはなし」

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退院余談〜その1

今回、思いがけないけがで3週間の入院生活を送ったわけだが、そんなに病院にいるのは人生初の経験だった(死にかけておいてよくそれで復活できたと思うが)。大吉と福助と暮らしてからも、そんなに家を空けたことはない。夜もほぼ飲みに出歩かなくなったし、外出する用事があるときもなるべく留守番は最小限にするようにしている。私がいない間、彼らはいったいどんな気持ちだったのだろうか。

入院中、嫁から大福が夜9時以降も寝室へ行かなくなったと聞いた。それまでは夜、私が晩酌していると、だいたい9時頃に大吉は「もう寝るね」という顔をして階段を登り、3階の寝室へ消えていた。福助もすぐに後を追う。

眠たいならリビングのソファで寝たらいいだろ、と思うが、寝室のベッドで本格的に眠りたいらしい。呼んでもまず降りて来ない。都内で働く嫁の帰りは遅くなることが多いため、結果的に私はいつもリビンクでひとり飲んでいた。そのことについて別に不満はなかった。付き合いの悪いやつらだと思ってはいたが。

ただ、たまに用事で出かけて帰りが遅くなったりすると、大福は「こんな時間までどこ行ってたんだよ!」という感じで不満げな顔をする(散歩もゴハンも済んでいる)。お前ら先に寝室で寝てればいいじゃん、と思うが、そういうことではないらしい。私が家にいるうえで「放ったらかして寝る自由」を満喫している気がする。理由はいまひとつ分からないのだが、そんな生活だった。

入院中は嫁と嫁の両親が大福の面倒を見てくれていたが、先に寝室へ行くことはなかったという。どこかしら寂しそうだったとも聞いた。私が病院で着ていた服を家に持って帰ったとき、大吉がしきりにニオイをかいでいたそうだ。言葉を話さないので真意はわからないが、「俺の帰りを待ってるのかな」と思ったりした。

そして2018年4月6日、私は退院した。大福は私との再会に狂喜乱舞するかと思いきや、どこかよそよそしい気がした。喜んでいるようなのだが、テンションは高くない。しかし久々に触れた大福は温かく、嬉しかった。

入院生活で私の体力はかなり落ちていたので、退院して1、2日は自分ひとりで大福を連れて歩く自信がなく、散歩も嫁と一緒に行った。少し歩いただけで疲れるほどだったが、大福はそんな私をちょくちょく振り返っていた。

家にいるときも、以前ならオモチャを持ってきて「これ、引っ張って」と催促してきたのが、一切そういうことをしなくなった。大吉と福助がバトルすることもない。静かにこちらを見ていることが多く、ずいぶん大人しくなったような気がした。入院前の「自分勝手さ」がまったくないのだ。もしかしたら、私の体調を気遣ってくれているのかと思った。

しかし今思えばその頃、大福は「見た目とニオイは同じだけど、お前、本物か?」という目で見ていたのかもしれない。後々、それを実感した。
(つづく)

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