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犬と山に移住して1年【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

2023年8月27日に移住を思い立ち、そこからなんだかんだと準備に奔走し完了したのが11月14日だから、まもなく1年が経とうとしている。この1年で何か困ったことがあったかというと、特にない。

山での暮らしはどうだっか

しいていえば、以前は海沿いだったから朝獲れアジが近所で買えたりしたが、八ヶ岳では不可能なのでそれがちょっと残念なことくらい。あとは今年の関東の夏の暑さなどを聞くと、あのタイミングで移住しておいて正解だったとさえ思う。
いきなり知らない土地に移住したら多少は困ることもあったかもしれないが、私の場合、2017年から鎌倉と八ヶ岳の2拠点生活をしていたので、気候も道もスーパーの品揃えの違いまで分かっていたから問題なく暮らせた。何人か地元の人とも知り合っていたため、分からないことはいろいろ教えてもらったというのも大きい。
山の麓の暮らしは、とても快適だ。腰越では週末の午後になると観光客であちこち大渋滞するのが当たり前だったが、こっちでは渋滞などない。そもそも人が少ない。かといって、スーパーまで車で10分、30分も行けば茅野市街に出られる。とにもかくにも夏の間、毎朝5時起きで散歩に行かなければいけないプレッシャーから開放されたのが一番嬉しい。
大福に「なんでこんなに早く起こすんだよ」という顔をされることもなく、夕方には「まだ行かないの?」と催促されることもなく、朝7時でも夕方16時でも犬と外に出られる。なんなら昼間でも平気だ。朝6時でもうアスファルトが焼けて、夕方17時半になっても気温が下がらなかった腰越では考えられないことだ。

のんびりしている余裕などない山暮らし

こう書くと、涼しい八ヶ岳でのんびり暮らせていいなぁと思うかもしれないが、この前も書いた通り山でのんびりしている余裕などない。
草刈り、芝刈り、雑草抜き、テラスや外壁のオイルステイン塗り、薪運び、薪割り、すぐに思いつくだけでこれだけの作業がある。しかもこれは一度やったら終わりではなく、草刈りなんて2カ月ほど経ったらまたニョキニョキ生えてくるから、ワンシーズンに何度もやらないといけない。オイルステインもできれば毎年、少なくとも2、3年に一度は上塗りしないと木材が傷む。
平日は仕事をしているので、それらの作業が休日に押し寄せる。今年は週末になる度、汗だくになって作業していた記憶しかない。
また、都会暮らしでは無縁だった機械や器具を買わないといけなくなる。草刈り機に始まり、クワ、枝切りバサミ、丸ノコ、チェーンソー、薪割り機、薪棚など必要に迫られて購入し、わが家は勾配のある土地に建っているため、重たい荷物を上まで上げる用の運搬機(40万円もした!)も買った。
それらのルーティンワークだけでなく、あれやこれや次から次にやることが出てくるから、休日にまったり映画を観たり、日がな1日読書している暇はない。
さらにこの1年は、定住するにあたってボロボロだった風呂と洗面室、トイレの水回りのリフォームでバタバタしていた。しかもキッチンはまだこれからだし、外に物置小屋を作ったりする予定なので、まだ当分は落ち着かない。
あまりにもやることが多いので、定住して30年の大工さんに「いつになったらゆっくりできるようになるんですか?」と聞いたら「そんなの来ないよ」と一蹴された。夏のうちに冬のための薪を準備して、冬は家の中の傷んだ箇所を補修したりオイルステインを塗ったり何かとやることがあるらしい。そうか、山の麓でのんびり暮らすのは幻想なのか。
ただ、都会の人混みの中で感じる慌ただしさみたいなものはない。自然に囲まれた静かな環境の中、ひとりせっせと肉体労働をしているだけで、これはこれでいいかなと思えてきた。
そんな感じで私は山で何かと忙しなく過ごしているが、大福はドッグランでバトルしたり、遊び疲れたら昼寝したりと、実に優雅にのんびり暮らしている。
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