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移住完了! すべてがいい思い出【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

長野県・八ケ岳への完全移住が完了した。少し前に書いたとおり、8月27日に移住を思い立ち、年内を目指していたが、11月7・8日で引っ越し作業して、その後空っぽになった家を大掃除して、11月14日にすべてを終えた。山の家には腰越の家一軒分の荷物が詰め込まれ、えらいことになっているが、あとは少しずつ片付けるしかない。

引っ越しで家の状態に驚く

9年間暮らした家を離れたわけだが、最後に大掃除していて、感心したことがある。それは犬がいた家とは思えぬほど、そのような汚れや傷がなく綺麗だったことだ。柱や壁をかじられた形跡もないし、フローリングにもほとんど傷がない。
むしろあるのは私がうかつに重たいものを落としたり引きずったときのもので、大吉と福助が付けたと思われるものはなかった。なんて優秀なやつらなんだろう。
といっても、大吉はともかく2014年に越してきた当時の福助は要注意だった。なにせ以前暮らしていた賃貸マンションでは壁紙は食い破る、本棚から本を引っ張り出しては粉砕する、あげくの果てには富士丸のお気に入りだった思い入れのある1人がけのソファーを食い破るという「荒くれ期」だった。
まだ1才前の幼い時期だったから仕方ないが(大吉は幼いときもしなかったけど)、その防御のため、扉や柱の角という角にステンレスの定規を貼り付けたのだった。その効果か無事に済んだが、今度は3人かけのソファーを破壊された。
帰宅すると、サンダルが粉砕されていたり、クッションが食いちぎられているなんてことも日常茶飯事だった。まぁ3才くらいになれば自然に落ち着くだろうときつくは叱らなかったが、ある日帰宅すると、寝室の枕を食いちぎって大暴れしたらしく、ベッドの上が羽毛だらけになっていた。
たまにはしかっておかねばと、このときばかりは「何してくれとんじゃボケェェェー!!」と鬼の形相で怒鳴ってみると、ベッドの上でジョジョジョジョ〜とビビションをたっぷり出し、さらにビビリウンチまでもらしたので「あぁぁぁぁぁぁ〜」となってトイレットペーパーを取りに走り、福助の隣で申し訳なさそうに反省顔になっている大吉に「お前は悪くないよ、お前は何も悪くないからな!」と掃除しながらフォローしたりして大変だった。
他にも、なぜか福助の中ではリビングにある右のスピーカーの前がトイレという認識で、そこで毎回オシッコをするのに対し、トイレシートを敷いておくべきか、でもそうなるとトイレ認識が固まってしまうのではないかというジレンマに悩んだこともあった。
そんなことも含め、3才になる頃にはすべて治まり、まったく手がかからなくなった。むしろ福助がいることで、大吉はお兄さんになり、いつも仲良くバトルしたり、昼寝したりしているのを眺める日々だった。家中を隅々までくまなく掃除しながら、そんなことを思っていた。

八ヶ岳で楽しく暮らそう

そういえば、せっかく海の近くで暮らしているんだからと、足漕ぎカヤックで釣りを始め、犬とカヤックに乗ったら楽しいに違いないと犬用ライフジャケットを買って乗せてみると「何これ全然楽しくないから早く帰りたい」という顔をされ、ライフジャケットは物置小屋行きとなったりもした。結構高かったのにな
そして、2018年の3月に、私は階段から落ちて頭から血を流して玄関に倒れた。酔っ払って階段で足を滑らしたことなんてないし、そうだったとしてもなぜ尻もちではなく頭から落ちたのか未だに謎だが、集中治療室に担ぎ込まれたときは危険な状態だった。
CTでは「頭蓋骨骨折」、「脳挫傷」、「外傷性くも膜下出血」、「急性硬膜外血腫」、「急性硬膜下血腫」が確認され、手術をしても助かる可能性は60%と低く、命を取り留めたとしても重い後遺症が残る可能性が高いといわれた。それでも手術することになったが、医師は妻に私の職業を聞いたうえで「恐らく、ライター業の復帰は難しいと思います」と言ったらしい。
なのになぜか、なんのリハビリもしていないのに普通に回復し、なんの後遺症もなくこうして今、文書を書いているのもまた謎だが、そんなことがあった腰越の自宅ともお別れか。死ななくてよかったが、こうして大吉と福助が元気なうちにまた別の環境に移ることができてうれしい。そんな彼らのために移住を決めたんだしね。
今度は、八ケ岳の山の家で楽しく暮らそう。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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