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八ヶ岳の優雅な犬たち【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

2023年12月に『山へ移住してからの大福の変化』を書いた。八ヶ岳に完全移住して間もないころだったが、散歩で大福の足取りが軽くなり、戻るとドッグランでバトルして山の暮らしを満喫しているようだった。それから約1年経ち、彼らはどうなったかというと──。

山での暮らしが当たり前になった大福

もうすっかり通常モードで、あのころのようにテンションが高いわけではなく、散歩で後ろ姿がウキウキしているわけでもない。なんなら、もよおしていないときは夕方の散歩に出てもすぐ引き返したがり、「あ、そうなの?」と家に戻ることすらある。
ただ、朝夕と家に戻るとドッグランでひとっ走りしたり、バトルするが、時間が短くなって満足すると大福ともに家に入りたがったりする。
彼らにとって、山での暮らしは日常になったようだ。それがどれだけぜいたくなことなのか、分かっていない。夏の間は朝5時に叩き起こされることもなくダラダラしていて、7時ころになってリビングに降りてきて「散歩行く?」という態度を見せたり、夕方も「そろそろ時間じゃない?」とアピールすれば散歩に行けて、しかも家の前にはプライベートドッグランがあっていつでも好きなだけ遊べる。それが当然だと思っているっぽい。

山の暮らしは地道な努力で成り立っている

読者の中には、そんな暮らしをしているわが家をセレブだと思っている方もいるかもしれないが、実際は全然違う。2017年に山の家を手に入れたときは、階段は朽ち果てていたし、雨漏りもひどかった。価格も軽自動車の新車以下だった(コロナ禍以降価格は上がっていて現在はそんな値段で買えないらしい)。
それらを少しずつ自分たちで修繕したり、構造的な部分は地元の大工さんにお願いして現在に至る。ドッグランも、雑草が生い茂っていた敷地だったのを草刈り機で整え、柵で囲い、地道に作ったものだ。
それを維持するために、ワンシーズンに何度も草刈りしなくてはならない。草刈り機の刃は、大きく分けてチップソーとナイロンがあって用途に応じて使い分けるが、頻繁に使うし付け替えるのが面倒になって現在は草刈り機を2台持っている。
2拠点生活から山に完全移住できたのは、私も妻も会社務めではなく、パソコンさえあればどこでも仕事ができる立場だったからで、その点では良かったと思っている。
あとは前回書いた通りやることが山積みなので、休日の度に汗だくになって作業しており、紅茶を飲みながらのんびり読書をする、なんて余裕はまったくない。だから「いつか山でのんびり暮らしたい」と夢見る人には言っておきたいが、それは幻想だ。実際は肉体労働の連続である。
ただ、自然に囲まれて静かなのは事実だし、犬たちにとってパラダイスであることは間違いない。大福はパラダイスだと思っていないようだが。
でもそれでいいと思っている。山の家を手に入れたのも、苦労してドッグランを作ったのも、完全移住したのも、すべては大福の快適さを求めてのことだったから。私の作業服はいつもドロドロだが、大福はのんびり暮らせばいい。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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