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人のライフスタイルを変える犬【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

この間、伐採業者から原木を買った。以前、台風でドッグランの木が折れて屋根に刺さった際にお世話になった人で「原木が出たら言ってくださいね」と事前にお願いしてあったのだ。「広葉樹の原木出たけど、いる?」と電話があり、「お願いします」というと、家の前にトラックが横付けされて、ドドドと降ろされた。

なぜ原木が必要になるのか?

なんで原木なんか必要なの? と思う方に説明しておこう。今年、薪ストーブデビューした。そうなると当然ながら、燃やす薪が必要になる。初年度は割った薪を買うしかないのだが、薪はそんなに安くない。
割った薪だと、ざっくり1カ月で約5万円くらいかかる。驚くかもしれないが、灯油でもそれくらいかかる。夏はエアコンがいらないほど(そもそも付いていない)涼しいから光熱費は安いが、その分冬にかかるから行って来いなのだ。
割った薪ではなく、原木を買って自分で割ると、半分程度に抑えられる。ただ、原木を割った薪はすぐには燃やせない。最低でも半年、できれば2年くらい乾燥させた方がいいといわれている。先ほどの「初年度は割った薪を買うしかない」という理由はそういうことだ。
来シーズン使う薪は、暖かい間に準備する。そろそろ春を迎えそうなので、原木を買い、夏の間に割って割って割りまくらなくては。当然ながら、割った薪を乾かしておく薪棚が必要になる。今年用、来年用、再来年用と、もう3つ用意してある。

一筋縄ではいかない薪づくり

ここからが大変なのである。駐車場に降ろされた原木を、まず薪ストーブに入る40センチくらいに玉切り(伐採した木の枝などを払って、用途に応じて一定の長さに切り分ける作業)しなくてはならない。それにはチェーンソーを使うが、それも買ってある。
次に、わが家は坂を登ったところが家なので、そこまで運搬機で運ぶ。運んだら、今度は薪割り機で1つずつ割っていく。こんなの全部斧で割っていたら体を壊す(とアドバイスされた)から、こういう機械も必要になる。
原木を割るのは初めてだが、薪ストーブを導入したからにはやらねばならない。そんな苦労してまで薪ストーブ使わなくても、と思うかもしれないが、暖かさが全然違う。腰越(鎌倉市)との2拠点生活をしていた5年ほどは、FF式(強制給排気の略)ストーブでしのいでいたが、薪ストーブを使ってみて、家全体がぽかぽかすることを知り、よく今までFFで堪えていたものだと思ったほどだった。
FF式ストーブにせよ薪ストーブにせよ、冬はマイナス15℃くらいになるので、強力な暖房器具は絶対に欠かせない。
ここまで読んで、別世界のように感じているそこのあなたに言っておきたいが、私もほんの15年ほど前までは渋谷区初台の1DKの賃貸マンションで暮らしていたのである。
そもそも元バンドマンで、山とかアウトドアに一切興味がなく、スポーツとか筋トレを全力で拒否し、夜な夜な高円寺あたりの居酒屋で飲んだくれていたタイプの人間なのだ。
それが富士丸と暮らしたことで変わり始め、大福を迎えてさらに加速し、八ヶ岳に完全移住までして、今にいたる。なんだたったら大福が喜ぶからという理由で、登山もするようになったし、そのために基礎体力を付けないとと筋トレもしている(酒は今でも飲むけど)。
だから、あなたも犬と暮らすと、自分が想像もしていなかったような方向へライフスタイルを変えられる可能性はある。犬はそういう存在なのである。
私も初台で暮らしている頃は、まさか将来、自分が原木を買って、それを切って薪にしようとするなんて夢にも思っていなかった。というか、あの量をどうするんだ? できるのか?
とりあえず今は、原木の隅っこを5センチくらいに切って、大福のゴハン台を作ろうとしている。現実逃避ではないよ。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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